家兎を、硬膜外カテーテルを留置して気管切開を行った状態で、長期間全身状態を悪化させることなく生存させることができた。すなわち慢性硬膜外、気管切開家兎の作成に成功した。また、呼吸パラメータ測定用のボックス型固定器を考案、制作した。気管切開口にはヒト乳児用のカニューレを挿入して呼吸回路と接続し、レスピロモニター(みなと医科RM300)とCO2モニター(ネルコアN-1000)により、分時換気量(MV)、呼吸数(RR)、呼気CO2(ETCO2)、PO.1を測定した。呼吸回路は再呼吸によるCO2負荷閉鎖回路とし、気道内圧計、流量計、電磁閉鎖弁を組み込んだ。 家兎は成人ヒトと比較して一回換気量が少なく呼吸数が多いが、この方法により各呼吸パラメータの測定は可能であった。しかし、呼吸にさほど影響を及ぼさずに長時間鎮静、不動化させて安定した呼吸パラメータを得ることが困難であった。結局、ジアゼパム10mgの筋注を行って鎮静を得たのち、リドカインの腰部硬膜外持続注入を併用して体動(特に後肢の運動)を抑制した。その結果、ほぼ呼吸数40-70/min、呼気CO2 45-55mmHgの状態が維持できた。 モルヒネ2mgを生食水に溶解して0.5mlとしたものを腰部硬膜外カテーテルより注入し、その前後の呼吸パラメータを測定した。注入10分後にはETCO2は上昇し、MVは減少した。CO2負荷により得られたMV/CO2とPO.1/CO2の測定値は、注入10分後より低下し、3時間前後低下した状態が持続した。無処置では家兎の不動化ができないため、ジアゼパム前処置でのモルヒネ硬膜外投与となったが、比較的長時間の呼吸抑制が認められた。この呼吸抑制は、薬物の種類、投与量、投与経路あるいは組み合わせなどにより増強したり軽減したりすると思われるが、まだ詳細は不明である。
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