研究概要 |
前立腺癌の大部分(90%以上)は腺癌であり、正常前立腺細胞の分泌機能を保持しており、正常前立腺細胞と同様にある種の分泌蛋白を細胞外へ分泌している。しかし癌病巣は尿道に通ずる導管システムを欠如しているために、癌細胞から分泌された蛋白は血中に漏出することになる。前立腺に特異性高く存在している分泌蛋白を探し出せば、この蛋白血中濃度は癌病巣容積を反映するので、有用な腫瘍マ-カ-となる可能性がある。我々はラット前立腺腹葉に多量に存在する分泌蛋白であるEMBP(estramustine binding protein)およびラット前立腺側背葉に存在する分泌蛋白であるメタロチオネイン(metallothionein)に焦点をあわせて研究をすすめた。EMBPについてはEMBPの生物学的特性についての検討、EMBP抗体(ポリクロナル、モノクロナル)の作成についての検討および作られた抗体の特性についての検討。さらに作成抗体による組織化学的手法による検討をおこなった。EMBP抗体をうる為には、EMBPを精製しなければならないが、我々は既存の精製法に比較して迅速にして簡便な精製法を確立した。このEMBPに対するポリクロナル抗体はラット前立腺腹葉および側背葉EMBPの3コンポネント(C1,C2,C3)を認識することをwestern blotting法によりあきらかにした。しかしこのポリクロナル抗体はヒトEMBPを認識できなかった。そこでモノクロナルEMBP抗体産生ハイブリド-マ株の作成をこころみた。幸いなことに20株以上のモノクロナル抗体産生株を手にすることができた。さらにこれらの多数の抗体産生株のなかからヒト前立腺EMBPを認識する2種類のモノクロナル抗体を見つけることができた。メタロチオネインについてもポリクロナル抗体をもちいてヒト前立腺にメタロチオネンが存在することを本研究で初めて証明した。
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