本年度の研究実績を以下の2項に分けてその概要を報告する。 1)2世代に亘る高脂肪食の前立腺発癌への影響 本実験は、前立腺癌を自然に高率に発生するACIratを用いて、胎内及び授乳中は母ラットに、離乳後は仔ラットに高脂肪食を与え、雄の仔ラットの前立腺癌の発生率に変化がないかを検討するものである。現在高脂肪食では31頭、通常食下では29頭のラットが餌育されており、最高令では80週に達している。今後は、100ー120週の適当な時期に屠殺しその前立腺癌の発生率を検討する予定である。 2)前立腺発癌過程の早期発見の試み 本実験は1)と同じACIratと、その母系で前立腺発癌率の低いCOPratを用い、発癌に関与しうる各種パラメ-タ-の経時的変化を比較検討するものである。現在迄に10週令から80週令の間においてテストステロン、エストラジオ-ル、コレステロ-ル、トリグリセリド等の血中濃度と、Brduの前立腺細胞核内取込み率(ラベリングインデックス)につき検討した。その結果、テストステロン、エストラジオ-ルには差はなかったが、コレステロ-ルとトリグリセリドはCOPratの方が約1.5倍高値を示した。この理由については不詳である。前立腺については、40週までは肉眼的な腫瘍や組織学的にも異形性を認めることはできなかった。しかし、80週ではACIratで3.4%、COPratで4.2%に異形性を認めた。ラベリングインデックスは、20週までは細胞2000個あたり1個未満であったものが、40週では1.7と上昇傾向を認めたが、ACIratとCOPratとの差は明らかでなかった。80週においては、2.8とやはり上昇傾向があったが、ratによる差は明らかでなかった。今後は120週での変化について検討を加える予定である。
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