|
本年度の研究実績の概要を報告する。 本研究は、前立腺癌を自然に高率に発生するACIratを用いて、胎内及び授乳中は母ラットに、離乳後は仔ラットに高脂肪食を与え、雄の仔ラットの前立腺癌の発生率に変化がないかを検討するものである。
本年度は研究の最終年度にあたり、動物を屠殺し、前年腺の組織学的検討、およびLabelling IndexとDNA ploicdy patternの測定を行った。その結果、60週齢では31頭、100週齢では29頭のラットを検討することができた。60週齢では癌の発生はなく、異型過形成(ATH)も高脂肪食投与群で6.3%(1/16)、低脂肪食投与群では13.3%(2/15)であり、癌の発生は低脂肪食投与群のみに1頭みられた。100週齢では、ATHが高脂肪食投与群で68.8%(11/16)、低脂肪食投与群では23.1%(3/13)であり、この差は有意(p〈0.05)であった。癌は高脂肪食投与群のみに18.8%(3/16)でみられたが、有意差はなかった。
細胞増殖の状態をみるために、Labeling Index(LI)を測定したが、食餌による差異はなかった。またFlowcytornetryによるDNA ploidy patternでも差はなかった。血中ホルモン値は、100週齢では高脂肪食投与群でテストステロンの高値(p〈0.05)とエストラダイオールの低値(p〈0.05)がみられた。
以上の結果より、従来実験的には証明することのできなかった「高脂肪食投与による前立腺癌の発癌促進作用」は、今回の実験方法で示されたものと考えられる。従って仮説は証明され、研究を行った意義は高かったと思われる。
|
