Candida albicansの菌学的多様性と尿路における病理性に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454369
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 大川 光央 金沢大学, 医学部, 助教授 (80019596)
• 研究分担者: 中嶋 孝夫 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (20217706) ; 徳永 周二 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (70207554)
• キーワード: Candida albicans / serotype / 菌糸形 / Candida glahurata / 尿路通過障害 / 上行性腎盂腎炎 / 血清中mannan / Candida蛋白抗原

研究概要

1.不完全尿管閉塞ラットにCandida albicans serotype A株を経尿道的に膀胱内に接種することにより高率に腎盂腎炎が発症することはすでに報告した。さらに、serotype B株を用いて検索し、ほぼ同じ高い発症率で、かつ組織内へ侵入している菌体のほとんどが菌糸形であることを確認した。次に、菌糸形をとらないCandia glabrata株やC.albicans変異株を用いた検索で、腎盂腎炎発症率はいずれも低率であった。2.ラット膀胱粘膜へのC.albicans株の付着、侵入過程を光顕および電顕にて観察した。無処置膀胱では、注入した酵母形菌体のごく一部が上皮細胞へ付着するものの、菌糸形への交換は認められず、膀胱粘膜にもほとんど変化は認められなかった。一方、0.1N塩酸にて前処置した膀胱においては、菌糸形への形態変換およ上皮への付着、さらに菌糸形菌体の上皮内への侵入が観察された。以上の成績は、C.albicansの尿路における病原性に菌糸形菌体が重要な役割を果していることを強く示唆しているものと考えられた。3.下部尿路通過障害をきたす代表的な疾患である神経因性膀胱を、両側骨盤神経を切断して作成したラットに前述のC.albicans serotype A株を同様の方法にて逆行性に接種した。腎盂腎炎は発症するものの、不完全尿管閉塞ラットに比し発症率は有意に低く、腎盂腎炎の程度も軽度であった。この相違は、尿流障害による腎盂内圧上昇の差に由来するものと考えられた。4.Candida尿症患者について、血清中mannan濃度をbiotinーstreptavidin enzyme immunoassayにて、また血清中Candida蛋白抗原をlatex agglutination test(CANDーTEC^<TM>)を用いて測定した。血清中mannanは尿路Candida尿症患者で高値を示すもののDーarabinitolに比し感度は低く、また蛋白抗原の尿路Candida症における診断的有用性は低いものと考えられた。

研究成果

• [文献書誌] 大川 光央,徳永 周二: "原因菌別にみた尿路感染症:Candida spp." 泌尿器外科. 4. 345-352 (1991)
• [文献書誌] S.Tokunaga,M.Ohkawa,M.Takashima,H.Hisazumi: "Clinical significance of mesasurement of serum Dーarabinitol levels in cadiduria patients" Urologia Internationalis.
• [文献書誌] S.Tokunaga,M.Ohkawa,T.Nakashima,H.Hisazumi: "Candida antigen detection by a latex agglutination test in candiduria patients" Urologia Internationalis.
• [文献書誌] "Calculus pyelonephritis due to Candida albicans with special reference to serodiagnostic parameters" Journal of Japanese Association for Infectious Disease.
• [文献書誌] 高島 三洋: "水腎症ラットにおける上行性カンジダ腎盂腎炎の実験的研究" 十全医会誌、投稿中.
• [文献書誌] M.Ohkawa,S.Tokunaga: "Clinical significance of Candiduria: an update" International Urogynecology Journal.