ヒト精巣胚細胞分化増殖制御に関する細胞間調節機序(Paracrine)機構の解明

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454370
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 奥山 明彦 大阪大学, 医学部, 助教授 (20093388)
• 研究分担者: 並木 幹夫 大阪大学, 医学部, 助手 (70155985)
• キーワード: 精巣 / 胚細胞 / paracrine / 器管培養 / androgen受容体 / 遺伝子

研究概要

ヒト精巣胚細胞分化増殖制御に関する細胞間調節機序解明の第一段階として、正常および病的状態にあるヒト精巣を器管培養し、培養条件設定(温度、アンドロゲン、FSH、LHなど各種ホルモンの添加)に応じた胚細胞のDNA、RNA、蛋白合成量を観察、また形態学的変化を観察し、DNA合成能との相関性を求め、同時にFSH、hCG、アンドロゲン受容体を同定し、胚細胞分化との関係を検討した。
培養条件については、温度に対する著しい感受性を胚細胞に認めたが、セルトリ細胞やライディヒ細胞は安定性を示し、アンドロゲン、FSH、LHに対してはまずセルトリ細胞やライディヒ細胞が反応し、つづいてDNA度生量の変化として胚細胞機能が変化した。胚細胞を直接支持栄養し、多様な蛋白合成を行なうセルトリ細胞を分離培養し、プラズミノ-ゲンアクティベ-タ-産生量のFSH依存性を証明、同時に同物質の分子量を同定し得た。さらにこれらの実験系に基づき、ヒトにおいても精巣中の各構成細中に存在すると推定されており、胚細胞の分化・成熟に必要と考えられるアンドロゲン受容体とFSH、hCG受容体、セルトリ細胞の蛋白合成能および胚細胞のDNA合成能との相互関係を細胞間レベルにおいて検討解明し得た。
以上の細胞遺伝学および分子生物学的手抜を用いた系統的な精巣機能の解明方法を用いて前立腺増殖抑制機序の解明にも一定の成果を得た。

研究成果

• [文献書誌] Masao Nakamura,et al.: "Testicular macromolecular synthesis in men with varicocele." Archives of Andrology,. 24. 69-72 (1990)
• [文献書誌] Mikio Namiki,et al.: "Testicular FSH receptors of germ cellーdeficient mice of W/Wv and SI/SId genotype." Mollecular Andrology,. 2. 53-58 (1990)
• [文献書誌] Masao Nakamura,et al.: "Impairment of testicular DNA sythesis in infertile men." Mollecular Andrology,. 2. 35-43 (1990)
• [文献書誌] Masami Takeyama,et al.: "Testicular steroids in spermatic and peripheral veins after gingle injection of hCG in patients with varicocele." Archives of Andrology,. 24. 207-213 (1990)
• [文献書誌] Noriro Nonomura,et al.: "Androgen dependent growth of Shionogi carcinoma is mediated through fibroblast growth factorーlike antocrine growth factor." Proceedings of the first worksshop on prostatic cancer,. 1. 29-34 (1990)
• [文献書誌] 奥山 明彦,中村 正広,並木 幹夫,園田 孝夫: "ヒト生殖細胞分化能と周囲細胞因子" ホルモンと臨床. 39. 3-9 (1991)