前立腺間質細胞が産生する増殖・分化節因子

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454371
• 研究機関: 香川医科大学
• 研究代表者: 和田 文雄 香川医科大学, 医学部, 教授 (20028385)
• 研究分担者: 奥谷 卓也 香川医科大学, 医学部, 助手 (80204121) ; 西 望 香川医科大学, 医学部, 助手 (10145047)
• キーワード: 前立腺 / 初代培養 / 細胞外基質 / 上皮一間質間相互作用 / 増殖因子

研究概要

1.前立腺上皮細胞の無血清初代培養に用いる添加物(増殖促進因子)の中で、唯一の不確定成分である牛脳下垂体抽出物(BPE)を置換え得る物質を検索した結果、ダイズトリプシンインヒビタ-(STI)やアンチパインなどのプロテア-ゼインヒビタ-がBPEと同等の効果を示すことが分った。STIの場合、約300ng/mlで最大の効果を示した。今後の培養においてBPEの代りにSTIを用いることにより、BPEに含まれる多くの生理活性成分の影響を排除し、完全に組成の明らかな培地を使用することが可能となった。
2.前立腺細胞の増殖,分化における細胞外基質、特に基底膜成分、の役割を知る目的で、初代培養上皮細胞に対する基底膜可溶化物(Matrigel)の効果を調べた。培養皿をMatrigelでコ-トすることにより、上皮細胞の増殖は強く促進された。Matrigelのこの効果は、培養皿への細胞の接着促進とより直接的な増殖促進作用によるものと考えられる。Matrigelの効果は、無血清培地だけでなく血清を含む培地を用いた場合にも見られることから、前立腺上皮細胞の増殖は可溶性の因子に加えて細胞外基質によっても調節されている可能性が高い。Matrigelは非常に高価なため、これを培養に日常的に用いるには経済的な困難が伴う。培養コストを受入れ可能なレベルまで引下げるためにMatrigelの使用量を減らすことが可能かどうか検討した結果、市販のMatrigel原液を1/10ー1/100程度に希釈して用いても十分な効果を示すことが明らかとなった。これにより、Matrigelを用いて培養条件を至適化していくことが可能となった。

研究成果

• [文献書誌] Matuo Y,Nishi N,Takasuka H,Nasuda Y,Nishikawa K,Isaacs JT,Adams PS,Mckeehan WL & Sato GH: "Production and significance of TGFーβ in ATー3 metastatic cell line established from the Dunning rat prostatic adenocarcinoma." Biochem.Biophys.Res.Commun.166. 840-847 (1990)
• [文献書誌] Taketa S,Nishi N,Takasuga H,Okutani T,Takenaka I & Wada F: "Differences in growth requirements between epithelial and atromal cells derived from rat ventral prostate in serumーfree primary culture." The Prostate.17. 207-218 (1990)
• [文献書誌] Okutani T,Nishi N,Kagawa Y,Takasuga H,Takenaka I,Usui T & Wada F: "Role of cyclic AMP and polypeptide growth regulators in growth inhibition by interferon in PCー3 cells." The Prostate.
• [文献書誌] Nishi N,Shimizu C,Okutani T,Kagawa Y,Takasuga H,Suno M & Wada F: "Rat prostatic growth factors: purification and characterization of high and low molecular weight epidermal growth factors from rat dorsolateral prostate." J.Biol.Chem.