腎尿細管細胞の増殖制御機構の研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454372
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 斉藤 泰 長崎大学, 医学部, 教授 (70039832)
• キーワード: 培養尿細管細胞 / 代償性腎成長 / 上皮成長因子 / トランスフォ-ミング増殖因子 / 肝由来尿細管細胞増殖因子 / 肝由来尿細管細胞増殖抑制因子

研究概要

まず、培養尿細管細胞の強力な増殖促進因子である上皮成長因子が一側腎摘出後に残った腎の中で、その含量が一過性に増加することを報告し、上皮成長因子が代償性腎成長のうち代償性過形成に関与している可能性があることを示した。また、培養尿細管細胞の増殖抑制因子であるトランスフォ-ミング増殖因子ーβは、この細胞のアルカリフォスファタ-ゼ活性を促進することから、この因子は代償性腎成長のうち、機能の亢進をともなった肥大に関与している可能性を示した。これらの2つの増殖因子は、いずれも腎で多量に作られており、腎の局所因子として尿細管細胞の増殖や機能を制御している可能性がある。
一方、一側腎摘出後の動物肝において産生されてくる尿細管細胞増殖制御因子のうち、増殖因子は、尿細管細胞以上の細胞には作用せず、腎に存在する既知の増殖因子とは異なるタイプと考えられる。また、増殖制御因子の方は、ゲル濾過からさらに一歩精製がすすみ、他の細胞種には作用が見られないものの、腎癌由来の細胞株の増殖を制御することがわかった。現在ウサギからの精製を試みており、今後さらにヒトからの精製も試みて行く予定である。また、これら肝由来の増殖制御因子が腎までどのように運ばれて作用するかも検討しなければならない。これらの因子が腎に生体内で到達していれば、腎に存在する各種増殖因子と共同で、代償性腎成長をコントロ-ルしているものと思われる。

研究成果

• [文献書誌] S.Kanda,K.Nomata,P.K.Saha,N.Nishimura,J.Yamada,H.Kanetake Y.Saito: "A study of growth regulators of renal cortical tubular cells in the rabbit liver." Kidney International. 37. 875-879 (1990)
• [文献書誌] S.Kanda,T.Igawa,M.Taide P.K.Saha,N.Nishimura,K.Nomata,H.Kanetake Y.Saito: "The effect of transforming growth factorーβ on the alkaline phosphatase activity in rabbit renal cortical tubular cell culture." Cell Biology International Reports. 14. 877-885 (1990)
• [文献書誌] S.Kanda,P.K.Saha,K.Nomata,M.Taide,N.Nishimura,T.Igawa,J.Yamada,H.Kanetake,Y.Saito: "Transient increase in renal epidermal growth factor content after unilateral nephrectomy in the mouse." Acta Endocrinologica. (1991)
• [文献書誌] T.Igawa,S.Kanda,H.Kanetake,Y.Saito,A.Ichihara,Y.Tomida,T.Nakamura: "Hepatocyte growth factor is a potent mitogen for cultured rabbit renal tubular epithelial cells." Biochemical and Biophysical Research Communication. (1991)
• [文献書誌] T.Tomida,X.Huang,T.Ando,N.Komi,S.Kanda,Y.Saito,A.Ichihara: "Ditribution of hepatocyte growth factor in virous rat tissues." Cell Structure and Function. (1991)
• [文献書誌] 神田 滋・金武 洋・斉藤 泰: "代償性腎成長のメカニズムー培養尿細管細胞を用いてー" 西日本泌尿器科. (1991)