研究概要 |
腎細胞癌8症例から手術的に摘出した8腫瘍のうち、コラゲナ-ゼ法による短期培養に成功した7腫瘍から、130個の分裂中期細胞を抽出してG分染法による染色体分析を行った。核型は4例がdiploid中心、2例はhypodiploid,1例がaneuploidであった。染色体数の異常でもっとも頻度が高いのは#3染色体で、7例中5例、うち4例がクロ-ン性異常としてモノソミ-、1例は非クロ-ン性ながらトリソミ-を示した。染色体数の過剰でもっとも多かったのは#7染色体のトリソミ-で、7例中4例に認めた。手術時すでに転移を有していた症例は2例であるが、いずれも#7染色体のトリソミ-を示していた。マ-カ-染色体は7例中6例に認めた。染色体の構造異常は数の異常と比べて出現頻度は少なく、クロ-ン性異常は#2と#6染色体の長腕異常(2q^+,6q^+)と#3と#8染色体の洗腕異常(3p^-,8P^-)をSOREZORE1例ずつ認めるのみであった。文献上多いとされる3pは1例のみで、しかもtriploid細胞で観察したものである。ただし、2q^+と6q^+を示す分裂細胞は全て#3染色体のモノソミ-を随伴していた。しかも#2,#6染色体の過剰部は#3染色体長腕のバンドパタ-ンによく一致していた。従って、3q12〜qterが#2,#6染色体へ転座したことに伴い、3pが欠失したものと考えられる。マ-カ-染色体の成因にも同様の機序が考えられる。すなわち、欠失した#3染色体がマ-カ-染色体に関与している可能性がある。 学会報告:畠 亮ほか:腎細胞癌のGバンド法による染色体分析。第78回日泌尿総会。平成2年6月。 論文発表:畠 亮ほか:腎細胞癌の染色体分析。日本泌尿器科学会雑誌。81:1389。平成2年9月。
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