着床現象における卵と母体の相互作用に関する研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454377
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 武谷 雄二 東京大学, 医学部(病)・産婦人科, 教授 (10114539)
• 研究分担者: 梁 善光 東京大学, 医学部(病)・産婦人科, 助手 (20220808) ; 堤 治 東京大学, 医学部(病)・産婦人科, 講師 (60134574)
• キーワード: activin / follistatin / epidermal growth factor / follicle / granulosa cells / FSH / CAMP

研究概要

昨年度Activinはparacrine機序で卵の成熟に関与していることを明らかにしたが今年度は実際にactivinがヒト卵胞液中に存在するか否かを調べてみた。activin濃度をFriend F5-5細胞の増殖に対する影響より測定したところヒト卵胞液中に131±40ng/ml のactivin-like snbstanceが認められた。またactivinの結合蛋白でactivinの生物作用を消去するfollistatinも卵胞液中に存在することが明らかとなった。activinの卵胞液中の濃度は血清中よりも100倍近く高いことが示された。さらに興味あることに、activin濃度は卵巣中の発育卵胞数と負つ相関性がみられたが卵胞液量や卵胞液中のestradiol,progesterone、prolactinなどとは関連性がみられなかった。以上よりactivinは卵胞液中に存在し卵胞発育のlocal factorとしての役割を果たしていることが示唆された。
初年度epidermal growth factor(EGF)が胚発育に促進的に作用することを見い出してきたが今年度はEGFの卵胞発育に及ばす効果をそれを構成する顆粒膜細胞の増殖に及ぼす作用を通じ検討した。するとEGFは0.5〜100ng/mlの範囲で濃度依存性にラット顆粒膜細胞の増殖を促した。またFSHも単独で増殖を高めたが、EGFが共存しているとFSHの増殖促進効果は発現しなかった。このことからEGFは未熟な卵胞に対しては発育を増強するがFSHが作用して分化が進んだ顆粒膜細胞に対してはその増殖に抑制的に作用するものと推定された。CAMPの産生を高めるforskolinによる増殖促進もEGFはFSHと同様に抑制を示したが、dibuthylic CAMPにより刺激された増殖に対してはEGFは影響を与えなかった。このことからEGFはCAMPが産生される以前のstepでCAMPの産生を抑制するように作用することによりFSHによる増殖促進効果に拮抗するものと推論された。

研究成果

• [文献書誌] Y.Taketani,M.Mizuno: "Inhibitory effect of interleukin 1 on the aromatare activity in cultured rat granulosa cells." Fujimoto,Mizuno(eds),Recent Advances in Ovarian function:Basic and Clinical Resdroh P71-80,Ares-Serens,Symp.71-80 (1992)
• [文献書誌] M.Mizuno,S.G.Liang.S.Ishihara.O.Tsutsuni Y.Taketani: "Physiological roles of epidermal growthfactor in reproduction." Fujimoto,Mizuno(eds),Recent Advances in Ovarians function:Basic and clinical Research. Ares-Serens.Symp.81-92 (1992)
• [文献書誌] Yuji Taketani,Masahiko Mizuno: "Hormonal regulation of the cell grswth in an endometriotic all culture system." Arch.Gynecol.Obstet.251. 29-34 (1992)
• [文献書誌] Osamu.Tsutsumi,K.Sato,Y.Taketani,T.Kato: "Determination of enzyme activites of energy metabulism in the maturing rat oocyte." Molecular Reproduction and Development.33. 333-337 (1992)