研究概要 |
ヒト繊毛性ゴナドトロピン(hCG)のβ鎖のシステイン変異蛋白、すなわちSS結合が切断されたβ鎖では、すべてα鎖との結合が阻害されたが、システイン26/110,23/72,9/90では一部α鎖との結合が認められた。そこで、これらの変異β鎖を含むhCGの免疫学的活性をフリーαおよびβとは反応しないhCGダイマー特異的なモノクローナル抗体であるB107およびB109を用い、ラジオイムノアッセイにて測定した。その結果、23/72を切断したβ鎖を含むhCGではB107を用いた場合に、B109の約3倍の測定値を示した。他の2種類の変異hCGおよび非変異hCGでは、両抗体によってほぼ同一の測定値であった。すなわち、β鎖の23/72のSS結合は、hCGの立体構造の決定に重要な役割を果していると推察された。また、これらの変異hCGのレセプターへの結合能を検討するため、マウス・ライデッヒ細胞由来の細胞株であるMA-10、あるいはラット睾丸を用い、^<125>I-hCGとの競合反応により測定を行った。その結果、hCGレセプターへの結合能は、SS結合の切断によって阻害されなかった。同様にこれら変異hCGの生物学的活性を、MA-10細胞からのプロゲステロン分泌により測定したが、どの変異hCGも非変異hCGの場合とほぼ同様であった。以上の結果より、β鎖のSS結合の切断はα鎖との結合を阻害することによりhCGの合成自体を抑制するが、結合したhCGの生物学的活性は維持されると考えられた。
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