ヒト性腺刺激ホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の構造と機能の関連を研究するため、塩基特異的突然変異作製法および遺伝子導入法を用い、各β鎖のSS結合を形成するシステイン残基を他のアミノ酸に変挿することにより、個々のSS結合が切断された変異蛋白を作製し、その特性を検討した。その結果(1)hCGβ鎖のどのSS結合を切断しても、α鎖との結合が障害された。しかしながら、その割合は各々のSS結合によって差異があることが明らかとなった。(2)hCG、LHにおいてはβ鎖のシステイン26/110間のSS結合が、当蛋白の分泌調節に関与していると考えられたが、FSHではその関与が明らかではなかった。(3)hCGβ鎖のシステイン23/72間のSS結合を切断した場合には、各種の抗体により異った免疫性を示した。すなわち、このSS結合がβ鎖の立体構造の決定に重要な役割を果していると推察された。(4)生物学的活性は、そのレセプター結合能と同様に、hCGβのSS切断によって大きな影響を受けなかった。(5)これらの変異β鎖を用いることによりhCGβ鎖のSS結合形成過程が明らかとなった。今後、さらにこれらの変異蛋白を詳細に検討することにより、産婦人科臨床領域への応用の可能性も示唆される。また当技術は、性腺刺激ホルモンのみならず他の蛋白にも応用できるため、各種の蛋白の構造と機能の解明にも有用であると考えられる。
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