子宮頸部扁平上皮殖袋直・分化調節機序の解析に基づく頸癌発生過程の研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454381
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 藤井 信吾 信州大学, 医学部, 教授 (30135579)
• 研究分担者: 小西 郁生 京都大学, 医学部, 助手 (90192062)
• キーワード: HPV DNA / replication / Progesterone / EGFR / CーerbBー2 Protein / ADF / thioredoxin

研究概要

性スチロイドの標的組織である頸部扁平上皮には、その受容体であるestrogen receptor(ER)、progesterone receptor(PR)の発現があり、子宮頸部扁平上皮の初期腫瘍化には、ERの消失、PRの発現という現象がその基本にあり、しかもその発現態度は、Human Papiuomavirus(HPV)のタイプで異なり、HPV6/11型感染では、ER発現の消失は少なく、HPV31/33/35型感染では、ER発現がやや抑制され、HPV16/18型感染ではER発現が消失することを明らかにしてきた。このことは、悪性化に深く関与するとされるHPV16/18型感染が子宮頸部扁平上皮の性スチロイド受容体発現に関与する遺伝子に直接影響を与えている可能性を示唆する。そして、腫瘍化した頸部扁平上皮は、PRの発現を介してその増殖あるいはHPVのreplicationを行っている可能性が示唆される。子宮頸癌由来培養細胞の検討ではprogesteroneの添加で3Hーthimidineの取り込みが増加し、臨床的にもコンジロ-マが妊娠中に増殖する所見と一致した。また、妊娠中の子宮頸部初期病変には、HPV DNAの存在が多いが分娩後の同病変のHPV DNAの検索ではHPVが検出されないことも判明し、HPV DNAは妊娠中のprogesteroneの影響下でreplicationしている可能性も示唆された。EGFRをCーerbBー2蛋白の局在に関しては、EGFRは基底層に強く発現し、cーerbBー2蛋白は表層に強く発現し、このcーerbBー2蛋白が発現する部位にHPV DNAが存在することから、EGFRの存在する部位ではHPV DNAのreplicationは起りにくく、cーerbBー2蛋白の存在する部位でHPV DNAのreplicationで起り易いことが示唆された。またヒトthioredoxinのhomologueであるADFの発現は、HPV DNAの存在部位に一致することから、ADFはHPV DNAのreplicationに必要な物質であるか、HPV DNAがreplicationを起す際に増加する物質である可能性が示唆され、ADF(thioredoxin)の発現を抑制する可能性のあるretinoic acidが扁平上皮の腫瘍化に抑制的に働く可能性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Konishi,I.et al.: "Immunohisto chemical analysis of ertrogen recepitors,progestersore neceptors,kiー67 anthgen and HPV DNA in novmal and meoplastlt epithelium of the uterine cererx" Cancer. 68. 1340-1350 (1991)
• [文献書誌] Fujii,S.et al.: "Coーexprssion of ATLーderived factor(ADF),a human the oredoxin homologue and human papiltamavituo(HPV)DNA in neoplashl cowxal epithelium" Cancer. 68. 1583-1591 (1991)
• [文献書誌] Fujii,S.et al.: "Immuno histochemical locelization of adueltーcell leukenua derised factor,a human thioredax in human fetal thsues" Virchows ArchiuA Pathol Anat. 419. 317-326 (1991)
• [文献書誌] Iwai,T.et al.: "Effect of human choriomic gonadotropin(CHCG)on the exprssion of Progesterone receptors and estrogeu receptors in raffi granulasa cells and the uterus" Endocrinology. 129. 1840-1848 (1991)
• [文献書誌] Iwai,T.et al.: "Exprssion of adultーtcell leukerua(ATL)derived fastor a human thioredoxin human lgue,in human Ovary througlout the menstruel cycle" Virchows ArchivA Pathol Anat.
• [文献書誌] Wang DP.et al: "Expression of CーerbBー2 protein and epidumal growth factor receptor in momal thssues of the female geritol tract and in the Placenta" Vichows Archic A Pathol Anat.