研究概要 |
我々は既に胎盤の絨毛細胞がインタ-ロイキン6(ILー6)を産生していることを報告した。このILー6の胎盤内分泌機能,特に絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の分泌機能への影響について検討した。妊娠初期のヒト絨毛細胞を酵素処理して単層浮遊細胞を作製した後に,ILー6で刺激すると刺激量に比例したhCGの分泌が観察された。この分泌はILー6レセプタ-(ーR)抗体の添加で完全に阻止されることより,hCGの分泌にILー6及びILー6ーR系が関与する事とILー6ーRが絨毛細胞表面上に存在する事が明らかとなった。絨毛細胞は他の代表的サイトカインであるILー1と壊瘍壊死因子(TNFーα)をも分泌するが,これら2つのサイトカインもILー6と同様にhCG分泌刺激能を有している事も示した。ILー1もTNFーαもhCG分泌前にILー6を分泌し,抗ILー6R抗体で処理するとhCG分泌が完全阻害されることから,いずれのサイトカインもILー6・ILー6ーR刺激伝達経路を活性化せしめている。ILー1とTNFーαを同時添加してみると,相乗的なhCG分泌がみられ,ILー6も単独刺激群に比して約10倍の分泌増加がみられ,抗ILー6R抗体処置により完全にその分泌が抑制された。このことは絨毛細胞由来のILー1とTNFーαが相乗的にILー6分泌を促し,ILー6ーRを刺激し,著明にhCG分泌調節をしていることを示唆している。一方,絨毛性ゴナドトロピン(GnRH)によるhCG分泌も以前より報告されているが,ILー6・ILー6ーR系を介したものかを検討すると,抗ILー6ーR抗体での分泌阻害は全くみられなかったので,この系はサイトカイン非依存性経路の賦活化にてhCG分泌をしていることが明らかとなった。以上の事から胎盤ホルモンとして代表的なhCGの分泌機構は、サイトカイン依存性及びサイトカイン非依存経路によって調節されている点を今回明らかとした。
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