ヒト胎盤由来のインタ-ロイキン6による胎盤ホルモン分泌調節機序の解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454382
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 松崎 昇 大阪大学, 医学部, 助手 (30199781)
• 研究分担者: 大橋 一友 大阪大学, 医学部, 助手 (30203897) ; 古山 将康 大阪大学, 医学部, 助手 (00183351) ; 佐治 文隆 大阪大学, 医学部, 講師 (90093418)
• キーワード: インタ-ロイキン(ILー6) / ILー6レセプタ-(ーR) / ILー1(interleukinー1) / TNFーα(tumor necusis factorーα) / TGFーβ(transtorming growth factorーβ) / hCG(human chonoue gonadotropn) / 絨毛細胞 / 胎盤ホルモン

研究概要

我々は前年度にヒト胎盤中の絨毛細胞がインタ-ロイキン6(ILー6)を産生し,その表面上に存在するレセプタ-(ILー6ーR)を介してヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の分泌調節をしていることを報告した。今年度はこの系への他のサイトカインによる影響を検討した。先ず胎盤がILー1,腫瘍細胞電死因子(TNFーα),腫瘍増殖因子(TGFーβ)のサイトカインを産生していることを各種測定法を用いて証明し,特異抗体を用いて産生細胞が絨毛細胞であることを示した。そこでILー1やTNFーαを用いて絨毛細胞を刺激するとhCGの分泌がみられたが、抗ILー6ーR抗体で処置するとhCG分泌が完全に阻害されること,両刺激によりILーり分泌が促進されるので、両刺激ともにILー6ーRの活性化によってh(CGの分泌促進していることが示された。その系へTGFーβを添加すると、ILー6分泌もhCGの分泌も完全に抑制されたので、TGFーβはhCG分泌を抑制的に働くことが明らかとなった。このようなサイトカインによるhCG分泌調節機序が絨毛細胞でも観察されるか否が4種の細胞株を用いて検討したが、そのうちの2株でILー1によるhCG分泌のみが不完全ながら保存されていたが、TNFーαによる経路は欠如していた。最後にサイトカインによるhCG分泌調節の細胞内情報伝達経路を各種のセカンドメッセンジャ-相同体と蛋白質キナ-ゼ阻害剤を用いて検討した。protein kinase A(PKA)を活性化した時にhCG分泌がみられたので、ILー1,TNFーα又はILー6によるhCG分泌系に各種蛋白キナ-ゼ阻害剤を添加してみたが全く影響を受けなかったことから、PKA依存性hCG分泌系とサイトカインによるhCG分泌系は相異なる経路であることが示された。しかしタイロシンキナ-ゼ阻害剤を用いた実験でILー6によるhCG分泌は阻害されたので、チロシンキナ-ゼの重要性が明らかとなった。ILー1やTNFーαによる細胞内情報伝達系は未だ不明のままだが,今後の研究を重ねたい。

研究成果

• [文献書誌] T.Taniguchi,N,Matsuzaki et al.: "The on hanced production of placental interleukinー1 labor during and intrauterine intection" American Journal of Obstetincs and Gynecology. 165. 131-137 (1991)
• [文献書誌] K.Masahiro,N.Matsuzaki et al: "Trophoblastーderived interleukin1(ILー1)stimulates the release of human chorimic gonadotropin by actiuating ILー6 and ILー6ーreceptor pyten in first trimester human prophoblasts" Journal of Chical Endocrinology & Metabolesin. 72. 594-601 (1991)
• [文献書誌] Y.Li,N.Matsuzaki,et al.: "Trophoblastーderined tumor necrozis factorーα induces release of human chorionic gonadotrogin using ILー6 and ILー6ーreceptorーdependent system in the normal human trophoblasts." Journal of Clinical Endocrinology and Metabolizm. 74. 184-191 (1992)
• [文献書誌] N.Matsuzaki et al.: "Trophoblastーderived transforming growth factorーβ,sappresses cytokineーinduced,but not gonadotropin releasing hormoneーinduced,release of human chorionic gonadotrogin by norinal human trophoblasts." Journal of Chinical Endocrinology and Metabolizm. 74. 211-216 (1992)
• [文献書誌] T.Taniguchi,N.Matsuzaki et al: "ILー1ーenduced ILー6ーand ILー6ーreceptorーmediated release of human chorionic gonadotropin by choriocarcinong cell linas activates cAMPーindependent signal transduction pethuoys" Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism. (1992)
• [文献書誌] K.Shimoya,N.Matsuzaki et al.: "Interleukinー8 in cord sera:A sensitiue and specific markar for detection of preterm chorioamrismtiz" Journal of Intections Dizease. (1992)
• [文献書誌] 松崎 昇,谷口 武,下屋 浩一郎,徐 東舜 他: "胎盤とサイトカイン" 診断と治療社, 4 (1991)
• [文献書誌] 松崎 昇: "絨毛性免疫抑制因子" 医学書院, 4 (1991)