研究概要 |
性腺間質系卵巣腫瘍である莢膜細胞腫、顆粒膜細胞およびいくつかの良性の上皮性卵巣腫瘍(漿液性のう胞腺腫、粘液性のう胞腺腫)の中にゴナドトロピンの特異的結合の認められる例が存在した。悪性腫瘍を含め、その他の卵巣腫瘍においてはゴナドトロピン受容体は認めえなかった。これらのゴナドトロピンの特異的結合の特性をSoatchard分析にて検討したところ、莢膜細胞腫におけるFSH受容体とLH受容体の結合部位数(Bm)はそれぞれ、0.66×10^<-14>moles/mg protein,1.35×10^<-14>moles/mg proteinで、解離定数(Kd)は各々6.75×10^<-10>M,11.47×10^<-10>Mであった。また、漿液性のう胞腺腫のFSH受客体のBmとKdは、5.1×10^<-14>moles/mg protein,1.68×10^<-10>Mであり、粘液性のう胞腺腫のLH受容体のBmとKdは、8.53×10^<-14>moles/mg protein,13.9×10^<-10>Mであった。これらのBmおよびKd値は正常卵胞と黄体とほぼ同様の値であった。 Sinface-binding autoradiographyにてゴナドトロピン受容体の局在を形態学的に検討したところ、莢膜細胞腫においては莢膜細胞類似の腫瘍細胞にLHの結合部位が存在すると考えられる所見が認められた。また、漿液性のう胞腺腫のFSH受容体の局在および粘液性のう胞腺腫のLH受容体の局在を検討したところ、いずれも腫瘍間質部にFSH,LHの結合が認められた。ゴナドトロピン受容体陽性の卵巣腫瘍例は、末梢静脈血中エストラジオールおよびプロゲステロン濃度が高値を示すとともに、末梢静脈血と卵巣静脈血の間に2〜3倍の濃度勾配を認めた。 一方、閉経後卵巣腫瘍症例には正常婦人に比べ、末梢血中、卵巣静脈血中エストラジオール、プロゲステロンが高値をとる症例が多く、免疫組織学的にエストラジオールは腫瘍細胞および腫瘍間質に局在することが認められた。それら症例にhCG負荷試験を行ったところ血中エストラジオールプロゲステロンの上昇する例が認められた。
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