研究概要 |
多嚢胞性卵巣症候群(PCO)に対し、ゴナドトロピン律動的皮下投与法を施行し、その排卵誘発機構について検討を加えた。PCO症例においては、血清LHの比較的高値に伴うLH/FSH値の上昇が排卵障害の成因と考えられている。hMG律動的皮下投与施行中においては血清LHの低下、FSH値の上昇に伴うLH/FSH値の正常化が観察された。その結果、適切な卵胞発育が誘起され、高い排卵率が得られたものと推定された。しかしながら本療法を用いても、従来の連日筋注法と同様、ゴナドトロピン療法にみられる副作用の一つである卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生を抑制することは不可能であった。本年度の検討では、PCO症例に対し消退出血後3日目よりGnRHアゴニスト(ブセレリン)900μg/dayを点鼻投与し、内因性ゴナドトロピンを抑制した後、hMG律動的皮下投与法による卵胞刺激を施行した。GnRHアゴニスト併用療法でも15周期全例に排卵が確認され、hMG単独療法と同様、有効な排卵誘発法であった。また、OHSS発生はGnRHアゴニスト併用療法の1周期に認められたのみで、hMG単独療法でOHSS発症した症例においてもGnRHアゴニストを併用することにより、その発症を予防することが可能であった。OHSSの発生には、PCOにみられる血清LH/FSH高値がその成因と考えられているが、GnRHアゴニストを併用することにより、hMG単独療法に比し、LH/FSHが有意に低下し、OHSSが予防できたものと推論された。しかしながらGnRHアゴニスト併用療法による排卵誘発は、未だ臨床的に確立された方法ではなく、投与量、投与法、期間によっても大いに成績が異なることが予想される。また卵胞刺激法についても、LH,FSHを同量含有しているhMG製剤のみならず、LHを含有しないpure FSH製剤を使用することにより、本療法の有用性について詳細な検討を重ねる必要がある。
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