研究概要 |
hMG律動的皮下投与法で妊娠した無排卵症例で、着床、非着床両周期にわたって血中ホルモンが測定できた非着床61周期、着床20周期においてその動態を比較検討した。血中LH,FSH値は、両周期ともに黄体期で抑制されていたが、両者間に有意差を認めなかった。血中P,E_2値は黄体期後半まで非着床周期で高値傾向を示したが、有意な差はみられなかった。しかし着床周期におけるP/E_2比は、黄体期初期より高値傾向を示し、黄体期5日及び7日目で非着床周期に比し有意な高値を示した。同様な傾向は自然排卵周期にもみられ、黄体期7日目のP/E_2比は、80〜100が至適範囲と考えられた。着床にと突ては血中P,E_2値の高値より、P/E_2比の高値が重要な意義をもつものと推論された。 排卵誘発にゴナドトロピンを使用する際、着床障害の成因としてpremature luteinization (PL)及びpremature LH surge (PLH)が考えられていることより、hMG律動的皮下投与法中のそれらの出現頻度について検討を加えた。PLの出現パターンをPLHとの関連性により、I型:PLH後のPL、II型:PLHを伴わないPL、III型:PL後のPLHのIII型に分類し、着床に及ぼす影響について考察した。PLは着床8周期(40%)、非着床30周期(49.2%)にみられたが、その出現頻度に有意差は認められなかった。PLの出現パターンは、着床周期で1 66.7%,2 33.3%,3 0%,非着床周期で1 56.7%,2 33.3%,3 10%の頻度であり、両群ともにI,II型の出現が高率であった。着床、非着床周期ともにP 上昇後のPLHの出現は低率であった。無排卵症のゴナドトロピン療法においては、PLは高頻度に出現するが、その出現頻度とパターンともに両周期間で差違が認められなかった。以上のことより、無排卵症のゴナドトロピン療法中にみられるPLやPLHの出現は、必ずしも妊娠成立の予後を左右する因子とは成り得ないことが明確となった。
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