研究概要 |
重症排卵障害による不妊症例に対しゴナドトロピン(hMG)律動的皮下投与法による排卵誘発を試み、その有効性、低多胎発生率や排卵機序を解明した。従来の連日筋注法より高い排卵率、妊娠率が得られ、副作用の一つである多胎発生も認められなかった。低多胎発生率の理由として律動的皮下投与法では複数個の卵胞が発育しても実際に破裂する卵胞が少数のため多胎発生が少ないものと考えられた。また多嚢胞性卵巣症候群ではゴナドトロピン療法中に卵巣過剰刺激症候群(OMSS)を発生しやすいが、その機序としてLFSH比の高値が考えられた。GnRHアゴニストを併用することによりLH/FSH比が有意に低下し、OHSSの予防が可能であった。hMG律動的皮下投与法に妊娠した18症例の着床-非着床期間の血中ホルモン動態を詳細に比較解析し、妊娠成立のための至適内分泌環境、特に黄体機能についても検討を加えた。着床においてはP,E_2の高値ではなく、P/E_2値が重要な意義をもっており、黄体期初期から中期におけるP/E_2比の高値症例で妊娠成立の可能性が高いと考えられた。また連日筋中法ではpremature luteinizationやpremature LH riseが高頻度に出現し、妊娠成立に悪影響を及ぼすとされているが、律動的皮下投与法でもそれらは高頻度(40〜50%)に出現した。しかし着床、非着床期間にその出現頻度とパターンに差違が認められなかったことより、妊娠成立の予後を左右する因子とは成り得ないことが確認された。 以上の3年間の研究成果より、hMG律動的皮下投与法は高い排卵率や妊娠率、低多胎発生、重篤なOHSSの防止などの優れた排卵誘発法であり、重傷排卵障害患者に対して有効な治療法として臨床的意義をもつものと考えられた。
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