本研究の根幹である超薄連続切片法は高度な技術および膨大な時間を必要とするが、本年度は職務にかかる時間が多く研究は遅れている。また、採取した標本は手術操作により骨粉を含んでいるため、特に超薄切片作製の防げとなっている。この点については丹念に骨粉を除去してゆくことでかなり良い切片が得られるようになってきた。しかしながら、前庭感覚細胞底部の神経終末部では切片のロスは許されず、このため場合によっては骨粉等のため重要な部分でロスが生じると数日をかけた一連の切片すべてが無駄となるため、一層の研究の遅延の原因ともなっている。ただし、以上のことはある程度予想していたことでもあり、研究自体は当初の予定に沿って進行しており、ある程度の結果は得られる見込みである。 一方、半規管膨大部陵および球形襄全体の立体再構築に関しては前年度中に、手術時に骨壁から組織をはずすことによって生じる変形が問題であることがわかっていたが、これに対して生体接着剤(フィブリングル-)を使用して立体的な構造の保存を試みたものの、やはり難しいことがわかった。したがって、七人の手術標本での感覚細胞三次元分布の研究についてはこれを断念もしくは計画延長する必要があるという結論に達した。 神経線維の免疫染色については現在進行中である。
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