研究概要 |
寒冷負荷時にみられる鼻粘膜腫脹に神経反射がどの様に関与するのかを知る目的で以下の実験を行った。 1.寒冷負荷徳にみられるヒト鼻粘膜腫脹に対する知覚遮断の影響 正常ボランテア15名を対象として安静時の鼻腔通気抵抗の変化を60分間、経時的に測定した後に-10〜-15℃の冷気吸入を10分間行ない、寒冷負荷後の通気抵抗の変化を40分間追跡した。次に同じ被検者を対象として寒冷負荷直前に4%リドカイン3mlを用いた鼻粘膜表面麻酔を行ない、寒冷誘発鼻粘膜腫脹に対する知覚麻酔の影響を観察した。表面麻酔そのものは通気抵抗に有意の変化を与えない事は予備実験で確認しておいた。寒冷負荷により通気抵抗は推計学的に有意に増加し、リドカイン前処置は寒冷誘発鼻粘膜腫脹を推計学的に有意に抑制した。 2.寒冷負荷によるモルモット気道抵抗増加および鼻粘膜血管透過性亢過に対するcapsaicine前処置の影響 Hastlcy系モルモット48匹を3群に分け、I群17匹ではcapsaicine500mg/kgを8日間かけて皮下注射し、II群17匹、III群14匹は溶剤のみを注射してコントロ-ルとした。I群,II群では-1℃の寒冷負荷を10分間行ない、寒冷負荷前後で呼吸抵抗を測定した。また1週後にEvans blue20mg/kg静注5分後に寒冷負荷を与え、5分後に開心し、左心室から100mlの生食水を注入して還流し、血管内の色素を洗い流した。その後直ちに鼻粘膜を採取し、分光光度計を用いて血管外漏出色素量を測定した。寒冷負荷により呼吸抵抗、鼻粘膜血管透過性は有意(P<0.05)に亢進した。しかし、capsaicine前処置によるsubstance P、CGRPの枯凋はコントロ-ルと比較して、以上の変化を有意に抑制することはなかった。 3.ヒトにみられる寒冷誘発鼻粘膜腫脹に神経反射の関与がある事を確認した。しかしCーfiberの関与を動物実験では確認できなかった。
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