研究概要 |
モルモットにおける聴覚機能と蝸牛血流の相互関係について研究し、以下に述べる成果を得た。 1.強大音負荷と蝸牛血流の変化:モルモットに強大音を負荷し、その際の蝸牛血流の変化を観察した。まず蝸牛基底回転にレ-ザドプラ血流計のプロ-グを当て、6,7,8,9,10KHzの110及び120dBSPLの音負荷を順次行ったところ、6及び7KHzにおいては血流の変化が認められなかったが、8,9,10KHzにおいて110または120dBSPLの音圧レベルで、音負荷に一致して一過性の血流減少が観察された。次に基底回転,第2,第3,第4回転に同様にレ-ザドプラ血流計のプロ-ブを当て、10KHz,120dBSPLの音負荷を加えたところ、基底回転においては血流減少が観察されたが,第2,第3,第4回転では血流の変化は認められなかった。以上の事実より、強大音負荷を行った場合,与える周波数に対応して反応する血流領域が蝸牛外側壁及びその周辺の組織に存在する可能性が強く示唆された。 2.強大音負荷と聴覚機能の変化:10KHzの純音を80dbSPLより10dB間隔で110dBSPLまで順次モルモットに3分間負荷し、その後のCompound action potential(CAP)の変化を観察した。血流と聴覚機能を併せて観察する実験システムを作りあげ、この研究は現在進行中である。したがって結論を述べるにはまだ早いが,騒音性難聴の臨床研究が指摘されている難聴をひき起す100dBSPLの音圧まで,CAPの変化が起りにくい傾向がみられている。これは大変興味深い結果で,血流変化が110dBSPLではじめて起り、同時にCAPの変化も生ずるという事実は,騒音性難聴の動物実験モデルを作ることができる可能性を示すもので,今後の研究課題である。
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