研究課題/領域番号 |
02454398
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
舩坂 宗太郎 東京医科大学, 医学部, 教授 (70009968)
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研究分担者 |
河野 淳 東京医科大学, 医学部, 助手 (00224808)
平出 文久 東京医科大学, 医学部, 教授 (50010343)
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キーワード | 人工内耳 / スピ-チ・プロセッシング / 子音聴取能 / 加工音声 / 電極遷移パタ-ン / ラセン神経節細胞 / 正答率寄与度 |
研究概要 |
平成2年度に引き続き人工内耳における最適スピ-チ・プロセッシングの開発に関する基礎的研究を行い、以下の新知見を得た。 1)子音に対する人工内耳の刺激電極遷移パタ-ン追求の結果、人工内耳は子音の構音様式をそれぞれ特有な電極遷移パタ-ンで情報を送っていることが判明した。さらに子音のソナグラムからの計算による電極の遷移パタ-ンを求め、実際の電極遷移パタ-ンと比較し、摩擦音、半母音、鼻音では、電極遷移パタ-ンは一応理にかなっているが、破裂音では特異なパタ-ンをとっていることが明らかとなった。 2)人工内耳患者の子音の異聴表を検討すると、1)で述べた人工内耳の電極遷移パタ-ンからの予測と必ずしも合致しない語音があった。これは人工内耳を通した入力と脳の語音知覚機構との整合の遅速によるものであり、人工内耳+脳という系での検討が重要であると判断された。 3)加工音声に対する人工内耳患者の正答率を調べ、子音のエネルギ-増幅で正答率の改善される子音はあるが、時間軸上の情報量増加では改善は見られないこと、およびエネルギ-増幅は、人工内耳の電極遷移パタ-ンが理にかなった子音に対しては正答率の改善につながることがあるが、電極遷移パタ-ンが理論値と異なっている子音においては正答率改善に役立たないか逆に低下傾向を示すことが明らかとなった。 4)重回帰分析から構音様式別音声の正答率への寄与度を算出し、鼻音性、半母音性が高い寄与度を持つことを明らかにした。 5)聾にしたネコでラセン神経節細胞の残存率と蝸牛電気刺激による脳幹反応の入出力曲線との関係を追求し、残存率が大であれば入出力曲線の傾斜が急峻であることが判明した。 以上から人工内耳の改良点は、破裂音の分析・コ-ド化をより精確にすること、鼻音のnasal murmurを増幅することにあると結論された。
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