研究概要 |
神経眼科学的検査として20名余の老人性痴呆患者に対して視力,視野測定装置,眼底検査装置等を用いて検査を行った。特に乳頭陥凹度と蒼白度の検査のために双眼眼底カメラをトプコン社より購入してこの機械による眼底撮影とイメ-ジネットシステムによる画像解析を開始した。ポジトロンエミツションカメラによる脳血流量,脳酸素代謝量の測定は酸素15標識した二酸化炭素及び酸素を吸入させ、平衡状態を得て測定する方法を当初用いたが、反復した測定により生理学的負荷をかけてその影響をみる方法を採用するために酸素15標識した二酸化炭素のみを短時間吸入させてその減衰をみるボ-ラス法に変更した。この方法により合計8件の脳血流の測定を行えた。フッ素18フルオロデオキシグルコ-スを用いた脳ブドウ糖消費量の測定は他の方法に比較して安定した結果を与えつづけている。在来までに検査を終了した22名のうちでフッ素18フルオロデオキシグルコ-スによる脳ブドウ糖消費量を測定し得た12名について神経眼科学的検査結果とポジトロンエミッションカメラの検査結果をつき合わせて分析を行い1991年6月フロリダにて行われる第15回国際脳循環代謝シンポジウムに演題を提出した。また1991年11月のカリフォルニア州アナハイムでの米国眼科学会にも眼科所見を中心に演題を提出している。この概要は次のようなものである。12名の多発硬塞性の老人性痴呆者において視覚処理能力を検査した。この結果視力0.2以上を少なくとも一眼に持つものは8名であった。4名が半盲を持ち,12名全員がステレオテスト,図形転写及び石原式色覚表にて障害を示し高次視覚中枢の障害が疑われた。脳代謝は、第一次及び第二次視覚野にてこれらの多発硬塞群は低く,視力の低い群は他よりも第一次視覚野の代謝か低かった。また半盲群では従来の報告通り反対側の第一次視覚野の代謝低下をみとめた。多発硬塞では、末梢中枢共に視覚路は障害される。
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