研究概要 |
緑内障は失明の大きな原因の一つであり重要な疾患である。緑内障においては視神経の萎縮が視機能喪失の原因であるが、この視神経障害にとって眼圧が重要な因子であることが従来より指摘されてきた。しかし同程度の眼圧水準の患者でも緑内障における視神経萎縮の程度には大きな個人差がある。このような個人差は眼科臨床医にとって重要かつ難解な問題である。われわれは従来より緑内障における視神経の易障害性が視神経乳頭の巨視的な形態の多様性によって影響を受けるであろうと推測してきた。このような観点からわれわれは実験動物において視神経障害の様態を研究し,さらに実際に臨床の場で緑内障患者の視神経乳頭を分類し,異常視野欠損の出現と対比することで個々の視神経の脆弱性を調べた。視神経乳頭の傾斜や回転は下方神経線維の易障害性と関係があり,小型の乳頭は多発性の欠損と相関し(文献3),大型の乳頭は乳頭ー黄斑線維の易障害性と相関がある(文献4)。一方視神経乳頭内の血管(特に動脈)は神経障害を軽減するように働くことが明らかとなった(文献2)。これらの乳頭形態異常は単に眼底カメラや検眼鏡で観察するだけではわかりにくい。従がって新らしい検査法の研究が必須であるが、特に3次元的な画像解析による方法(文献1)やレ-ザ-走査眼底鏡による方法(文献5,6)などは今後発展の期待できる方法と考えられる。今後は従来の検査方法に加えて新らしい検査法も使することによって神経障害の理解を一層深めるよう努力すべきと考えられる。
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