家兎眼の上脈絡膜腔内へ内腔をもつシリコンスポンジを埋没移植して上脈絡膜腔の静水圧を安定して測定できる実験系を確立した。この系を用い、上脈絡膜腔圧と同時に眼内圧を測定して脈絡膜剥離発生と関わる興味深い結果を得ている。 1.眼内炎症の無い、正常眼圧の家兎眼では猿眼と同様に上脈絡膜腔圧が眼内圧より常に低いことが明らかとなった。 2.脈絡膜剥離発生の初期段階と考えられる静水圧差の減少や消失また逆転現象が低眼圧や脈絡膜炎症を負荷した家兎眼で確認された。 低眼圧の長間時持続した家兎眼において静水圧差の減少や消失が確認され、一部の例では上脈絡膜腔圧が眼内圧より高くなることが確認された。また経強膜冷凍凝固術による急性脈絡膜炎を惹起させることによっても同様の結果が得られた。さらに圧差の逆転現象は脈絡膜の急性炎症と低眼圧を同時に負荷することにより、より高頻度に起こることが明らかとなりつつある。 3.臨床実験では脈絡膜剥離の出現・消失前後で前房蛋白量が急激に増加・消失することを確認しており、脈絡膜剥離の眼内液循環動態は上記家兎眼における圧差逆転現象の結果と一到することを見出した。 低眼圧や脈絡膜炎症は重要な要素であるが、これ以外にも脈絡膜循環障害は脈絡膜剥離発生の要因と考えられ、今後渦静脈の締結や強膜内陥術を行いその影響についても検討する予定である。現在までに個々の要素について圧差逆転現象の可逆性も明らかとなりつつあり、臨床的に問題となる胞状脈絡膜剥離の防止や治療や可能性についてさらに探っていく予定である。
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