目的:網膜色素上皮細胞(RPE)における色素顆粒は胎生期に形成され、それ以降、増加しないことはよく知られている。細胞内でDopaやTyrosineが酸化をうけ、Melaninへと変化する際には、RPEに対して影響を与える可能性のある前駆物質や活性酸素が産生される。今回、一眼に色素上皮細胞(PE)および無色素上皮細胞(NPE)の存在する牛眼RPEを用いて、Tyrosinase活性の異なるPEとNPEではDopaが酸化される際の影響にどのような相違があるかどうか細胞増殖、活性酸素消去酵素活性(Super-oxide dismutase(SOD))、細胞周期について検討した。 方法:牛眼杯をPEとNPEの部分に分け、各よりRPEを培養した。培養液中にDopa(100μM、250μM)を投与し、酸素濃度を5%、10%、20%と変化させ、24時間毎に細胞数を測定した。さらに、48時間目の細胞のSOD活性をhypoxanthine-xanthine oxidaseの反応とluminol発光を応用して測定し、細胞周期についてはCycleTESTによる染色を行い、FACScan/CellFITsystemにより細胞内のDNA量を測定した。これらの結果はPEを指標とする多変量回帰分析により統計学的に分析した。 結果:細胞増殖についてはPEの存在とDopa濃度あるいは酸素濃度との相互の影響を示す多変量回帰分析による係数は正であり、PEはNPEよりDopaの細胞毒性に耐性があることを示していた。さらに、培養RPEに対してDopaには細胞周期をS期で停止する作用があり、色素顆粒を伴うものに有意に強く認められ、酸素濃度の上昇はメラニン色素の有無にかかわらず細胞周期のG_1期に影響を与えていた。一方、DopaがMelaninへと変換される際には、色素の存在の有無にかかわらず培養RPEのSOD活性の増加が認められた。
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