研究概要 |
本年度は光遮断による影響を視覚中枢でみるため、生理活性のある物質の遺伝子発現をin situ hybridization法で検討した。光遮断実験は特別に作った暗箱飼育装置2台に妊娠ラットを完全な暗室状態で飼育し、生れた仔を種々の状件下で飼育した。状件別に一つのグループとし(1)生後より12時間サイクルで明暗の光刺戟を加えたグループを正常コントロール群とし、(2)完全な暗室のまゝで飼育し、3週間後に暗室の中で頚椎脱臼により屠殺し脳を取り出した群、(3)完全暗室で飼育3週間後に1時間の光刺戟を加えた群、(4)(3)の場合を10分とした群、(5)暗室で10日飼育し、片眼縫合してから生後3週間まで12時間の明暗サイクルの光刺戟を加えた群に分け、組合せて実験を行った。取り出した脳より凍結切片を作成し、パラホルムアルデヒド固定した。プローブとしてPCR法で作成、精製したラットに特異的なDNA片を用いて^<35>Sまたは^<32>Pでラベルしてから、ハイブリダイゼイションを行い、オートラジオグラフィー法で遺伝子発現を検出した。まずガン遺伝子であるC-fosのプローブを用いたが、mRNAの発現が、大脳切片に含まれる皮質17,18野と外膝状体にほとんど認められず、各群に差を認めなかった。同じように、ガン遺伝子であるJunについても検出を行ったが、発現が弱く差を認めなかった。現在成長因子のBDNFについて実験中である。他にプローブとしてNGF,FGF,NT_3のDNA片を精製してプラスミド中に保存してあるので、これらについても実験を行う。光刺戟を今回の状件で加えただけではC-fosやJunを含め簡単に変化しないようなので、光刺戟と遮断の状件を検討するとともに、検出法の感度を上げるなど改良しながら、この研究を進めていく。
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