レ-ザが骨組織形成細胞である骨芽細胞の増殖と分化とを促して骨質を形成することを明らかにする目的で以下の実験を行った。すなわち、我々が開発したレ-ザ・マイクロビ-ムを組込んだ細胞工学用顕微鏡を用いて、株化骨芽細胞MC3T3ーEIを対象として、ヘリウムネオンレ-ザとアルゴンイオンレ-ザとをそれぞれ各種条件で連続培養中の細胞群に照射し、培養骨芽細胞の増殖と分化について、それぞれの指標として蛋白質量とアルカリ性フォスファタ-ゼ活性とを測定し、あわせて、被照射細胞の超微細構造的な変化を透過型電子顕微鏡で観察した。当該年度中に得られた研究実績の概要は以下の通りである。 いずれのレ-ザも1日1回1分間の1回照射では、蛋白質量とアルカリ性フォスファタ-ゼ活性とはともに変動せず、超微細構造学的にも細胞に変化を認めなかった。また、1日1回15分間の1回照射では、蛋白質量とアルカリ性フォスファタ-ゼ活性とはともに変動しなかったが超微細構造学的にはミトコンドリアの膨化等の細胞内小器官の変性を認めた。これらの結果を踏まえて、以後のレ-ザ照射は1日1回15分間よりも照射エネルギ-の累積量が少ない条件で行った。試行錯誤の末、1日1回5分間の5回照射(5日間照射)すると、いずれのレ-ザにおいても、蛋白質量が僅かながら増加し、細胞の増殖が促される傾向を示したが、アルカリ性フォスファタ-ゼ活性には変動を認めなかった。超微細構造学的には変化を認めず、細胞の変性を示唆する所見も明らかではなかった。現在までのところ、レ-ザ照射が骨芽細胞であるMC3T3ーEI細胞の増殖を促進する細胞生物学的な効果をもつことを示唆する所見を得ているが、骨基質を形成するような分化を促進する効果については、これを支持する結果を得ていない。照射条件を検討するとともに半導体レ-ザについても検討を加えるべく実験を継続中である。
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