研究概要 |
本研究では、破骨細胞および前駆細胞を同定する従来の組織化学的方法を再検討すると共に、新しい組織化学的方法の開発も試み、以下の結果を得た。 I.<既存の組織化学的染色法の再検討>___ー 新生児および成長ラット、マウス、モルモットと成長ウサギの脛骨。脾、肺、腎を10%中性ホルマリン液で固定後、各組織における酸フォスファタ-ゼ(ACP)、酒石酸低抗性酸フォスファタ-ゼ(TRACP)、酒石酸低抗性アデノシントリフォスタ-ゼ(TRATP)の活性を組織化学的に検出した。各動物の各蔵器における活性を凍結切片で検出した場合は、TRATPは破骨細胞を含む骨組織のみに認められた。一方、JBー4樹脂または低融点パラッフィン切片では、強いTRACP,ARTAP活性が破骨細胞に認められたが、同活性は骨芽細胞、脾および肺のマクロファ-ジにも認められた。そのため、樹脂およびパラフィン切片では、TRACP,TRATP活性が破骨細胞以外の細胞系にも認められることが再確認できた。 II.<新しい組織化学的染色法の開発>___ー 研究代表者の吉木は骨組織を塩化シアヌルで処理すると脱灰切片でも容易に類骨組織を同定できることを既に報告している。そこで本研究では塩化シアヌル処理組織でのACP活性の検出を試みた。その結果、塩化シアヌルで種々の組織を48時間処理後、ACP活性を検出すると同活性は破骨細胞と骨表面に隣接する単核細胞のみに認められることが明かとなった。また、塩化シアヌル処理後の組織ではATP活性も破骨細胞にかなり特異的に認められることも見いだした。従来の染色法と比較すると、塩化シアヌル処理後に認められるACP活性は、破骨細胞の分化過程でTRACP,TRATP染色で認識されるものより、より分化した細胞系を認識できる可能性が示唆された。また、本法ではエオシンとACPの二重染色を行うことにより、破骨細胞と類骨組織を同一切片上で容易に同定することも可能であった。
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