研究概要 |
主としてラットを用いた実験的研究から骨代謝のサ-カディアンリズム発現機構に関して概ね以下のような研究成果を得た。今年度の研究は主として骨代謝のサ-カディアンリズムの実体についての基礎的デ-タを得るのに費やされた。 (1)脛骨や大腿骨,歯牙象牙質などの硬組織へのカルシウムの沈着効率には生理的なサ-カディアンリズムが存在し,さの沈着効率は動物の活動期において最も高い。 (2)骨組織から血中へのカルシウムの動員(骨吸収機構)にもサ-カディアンリズムがあり,この活性は動物の休止期において最も高い。 (3)血中のカルシウムや燐の濃度にみられるサ-カディアンリズムは上記の(1)と(2)のバランスによって決定され,(1)と(2)の周期的な変動のうえに,血中のカルシウムホメオスタシスか維持される。 (4)骨代謝にみられるサ-カディアンリズムは動物の摂食活動の周期性や、外界の光環境と密接に関連しており、リズムの振幅や位相が決定される。 (5)骨代謝のサ-カディアンリズム,特に骨吸収機構は、血清中に存在する夜性因子の活性に大きく依存している。 (6)骨吸収の阻害剤や骨の石灰化を抑制する薬物の効果は、それらの薬物を,背後にある骨吸収や骨形成のサ-カディアンリズムのどの位相において与えるかによって量的,質的に大きく異なる。 これらの研究成果を基礎としながら,次年度においては、(5)と(6)の点を中心に,バインディングアッセイ等の手法を用いながら,骨代謝のサ-カディアンリズムの発現機構の解明にむけて研究を続ける予定である。
|