研究概要 |
1)骨代謝のサーカディアンリズムを支配する液性因子の解析 骨代謝,特に骨吸収のサーカディアンリズムを支配する因子がラットのみならず,ヒトの血清中にも存在することが明らかとなった。この因子は熱処理によって活性を失う蛋白性の因子であることが推定された。さらに,この液性因子にみられる骨吸収活性のサーカディアンリズムは,受容体レベルでコルチゾール作用を遮断するRU-486処理によっては大きな影響を受けず,また,抗PTH抗体処理によっても影響されないことから,骨吸収に対して抑制的に働らくコルチゾール,あるいは促進的に働らくPTHではないと推測された。現在,さらにこの因子を推定する作業をすゝめている。 2)硬組織形式のサーカディアンリズムの個体発生について 齧歯目動物の切歯象牙質にはサーカディアンリズムを持つ層線形成が普遍的にみられる。又,成長期の様々の動物の骨組織にもサーカディアンリズムを持つ層板骨の形成がみられる。今年度の実験では,ラットの切歯象牙質にみられるサーカディアンな層線形成を指標として,このサーカディアンリズムが,個体レベルで,どの時点から発現するかについて検討した。その結果,生後15日前後からサーカディアン周期の層線形成が次第に明らかとなり,それ以前は,1日3本程度のウルトラディアン周期の層線形成が主体であることが明らかとなった。この事実は,中枢機構に存在すると仮定されるサーカディアンリズムの発達あるいは性質を反映する所見と思われ,サーカディアンリズムの個体発生を考える上で示唆に富む事実と思われた。
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