1.血液中フッ素の微量測定法を確立するためにフッ素イオン選択性電極法、ガスクロマトグラフィ-法、加水分解法および低温酸素プラズマ灰化法を検討した。その結果、血液中フッ素の微量分析には低温酸素プラズマ灰化法とガスクロマトグラフィ-法との組合せが再現性に優れた良好な分析法であるとの結果を得た。 2.上記の分析法で試料の測定を行い、下記の研究結果を得た。 (1)ヒト全血液中のフッ素の分布状態とその絶対量の測定では、血液中の総フッ素量の74%はイオン以外の存在様式を有するフッ素であり、また全血液中の総フッ素量の40%は血餅中に存在していることを見いだした。 (2)有機フッ素化合物および無機フッ素化合物を投与した2群のラットにおいて、それらの化合物の血中への移行速度と移行量を血清および全血液について比較検討した。その結果、有機化合物の全血液中における動きは血清中の動きの測定だけでは推し量れないことを見いだした。 (3)種々の腎機能低下患者における血清および全血液中のフッ素量を測定した。その結果、血中クレアチニン値と全血液中の総フッ素量の相関関係を発見した。また血液中において血清および血餅間でフッ素の移動が起こることを見いだした。
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