現在までに、血液中のフッ素測定法として、低温プラズマ灰化法、ガスクロマトグラフィ-法、電極法を確立した。そしてこれらを用いて、健常人(男女別)、骨粗鬆症患者、腎機能低下者等の血液中フッ素量を測定した。その結果、1)性差が存在する傾向が認められ、2)そのうち共有結合性フッ素量は女性の性周期と共に変動し、これはフッ素の代謝がホルモンの働きとカルシウムの挙動に並行していることを示唆した。3)骨粗鬆症においても共有結合性フッ素の顕著な増加が認められ、この場合にもカルシウムが関与しているものと考えられた。しかし、カルシウムの関与はイオン性フッ素に対してであって、共有結合性フッ素に対するものとは考えられないため、ホメオスタ-シスの中に、無機フッ素化合物と有機フッ素化合物間の並行をもたらす機構が存在する可能性が示された。4)腎機能とフッ素量との関係でも腎機能が低下すると共有結合性フッ素が血餅中に増加した。5)一回の透析処置によって減少するのはイオン性フッ素であり、最終的には共有結合性フッ素が減少していた。以上の分析結果は、生体内、特に血液内で無機フッ素と有機フッ素間の相互交換が起こることを示唆する結果であった。現在、より微量のフッ素が測定できるように、さらに感度が高く、短時間で数多くの試料を分析することを可能にするため、パイロハイドロリシス法およびフロ-インジェクション法の確立を試みている。
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