研究概要 |
培養ラット耳下腺explantをprotein kinase AおよびCを活性化するイソプロテレノ-ル(IPR)とカルバコ-ル(CC)で刺激するとアミラ-ゼ分泌のみならずオルニチン脱炭酸酵素やDNA合成の誘導がみられる。この際、IPRで17K,20K,31K,32K蛋白の、また、CCで31Kと32K蛋白のリン酸化が促進される。この蛋白リン酸化の役割、特にリン酸化がアミラ-ゼ分泌とODC誘導のいずれと関連するかを追求するため、IPRの生理作用を特異的に阻害する薬物の検索を行った。生体膜、細胞骨格及びprotein kinaseに作用すると考えられる15種の薬物について検討した結果、モノカチオンイオノホアのモネンジンがIPRによるODC誘導のみを強力に抑制し、アミラ-ゼ分泌やCCの作用には全く影響しないことを見いだした。これに反し、抗生物質のポリミキシンBはCCによるODC誘導のみを選択的に阻害した。そこで、この2種の薬物の耳下腺蛋白のリン酸化に及ぼす影響を追求したところ、モネンジンはIPRによって促進される4種の蛋白のリン酸化を全て抑制し、CC依存性の蛋白リン酸化には全く抑制を示さなかった。一方、ポリミキシンBはCCによる31Kと32K蛋白のリン酸化を阻害したが、IPR依存性の4種の蛋白のリン酸化を抑制しなかった。他方、IPRとCCによるアミラ-ゼ分泌及びODC誘導と蛋白リン酸化の促進の経特変化を追求した。両唾液分泌促進剤ともアミラ-ゼ分泌の最大促進効果を1時間以内に示すに対し、ODCの最大活性には6時間を要する。但し、この最大活性を得るには促進剤を4時間作用させるだけで十分である。一方、両促進剤による蛋白リン酸化の促進は2時間後に最強となり、4時間後には促進は殆どみられない。すなわち、蛋白のリン酸化はODC誘導に先行する。これらの特異的阻害剤を用いた実験とIPRとCCの作用の経特的変化から、蛋白のリン酸化はアミラ-ゼ分泌とは相関せず、ODC誘導に関与していることを示唆していると云える。
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