研究概要 |
耳下腺の唾液分泌促進剤に対する増殖応答機構を解明する目的で、リン酸化蛋白質の動態と情報伝達について調べた。(1)リン酸化蛋白質解析用の抗体を得るために、bromoacetic acid Nーhydroxysuccinimide esterにホスホスレオニンまたはホスホセリンをカップリングさせ、さらにそれらをKLHに結合させて家兎免疫用の抗原とした。1羽のみよりホスホスレオニンに特異性の高い抗血清を見出したが、抗体価が低く、引続きブ-スタ-の方法を検討中である。一方ホスホセリンに特異性のある抗体は、目下のところ得られていない。市販の抗ホスホチロシン抗体を用いて耳下腺蛋白質をウエスタンブロッティング解析したところ、14K,16K,33Kをはじめ約9本のバンドが検出された。抗体の特異性、唾液分泌促進剤の影響、そしてプロテインキナ-ゼやホスファタ-ゼに対する阻害剤の効果について現在検討中である。(2)その産物がリン酸化活性やDNA結合能などを有し、細胞増殖との関連性が深いプロトオンコジ-ン、cーfos,cーmyc,cーjun,cーsrc遺伝子の発現が、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)遺伝子の発現より早期にイソプロテレノ-ル(IPR)によって促進されるということが、マウスを用いたin vivo,そして培養ラット耳下腺エクスプラントを用いたin vitroの実験で明かとなった。そこで同様な腺分泌促進能並びにDNA合成誘導能を持つcholinergic agonistであるカルバコ-ル、αーadrenergic agonistであるメトキサミンを用いて、in vitroでそれらの定常mRNAレベルに対する影響をノ-ザンブロッティング及びドットブロッティングにより解析したところ、in vivoと全く同様に刺激後30分でcーfosが、60分でcーjun,cーmyc,cーsrc mRNAが最近値となり、またこれらはいずれも一過性で60分以内にコントロ-ルレベル(無刺激)にまで復帰することが判明した。そしてこれらの効果は、アミラ-ゼ分泌促進能、ODC誘導能にほぼ比例して、IPR>カルバコ-ル>メトキサミンの順であった。
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