味蕾の豊富なコイの味覚上皮(髭と口唇)より抽出したpoly(A)^+mRNA(グアニヂウム塩法により抽出しオリゴdTセルロ-スで精製)をXenopusの卵母細胞に注入し2〜3日間培養して電気生理学実験に供した。味覚受容体の発現は、ガラス微小電極(3MKC1を充填)を卵母細胞内に刺入して、味刺激溶液(アミノ酸)を与えた時の電位または電圧固定時の電流変化を記録観察することにより検討した。卵母細胞の静止膜電位は、コラ-ゲン処理やmRNAの注入による損傷により生ずる膜の透過性の増大のため正常な卵母細胞より低い(正常値:ー30〜ー80mV、処理卵:ー20〜50mV)。mRNA注入後の卵母細胞膜上における味覚受容体の発現の期間は、 ^<35>Sーメチオニンで標識して生成タンパクのラジオオ-トグラフィ-による分析をしないと正確には分らないが、約48〜72時間の間には受容体のタンパクが発現しているものと電気生理学的な結果(この時期に味覚受容体による応答と考えられるデ-タが得られている)より推測される、現在の所、発現率は非常に低いため満足のゆく結果は得られていないが、培養条件や、その他の実験手枝の改良により発現率の向上を計っている。またintactの鯉でも従来の神経応答実験も継続して行っており、受容サイトにたいする新しい知見が得られている。生化学的には、精製したmRNAを濃縮してcDNAライブラリ-を作製し、PCR法によりクロ-ニングを行い、現在6つのグル-プに分類してある。卵母細胞膜上の味覚受容体の発現が電気生理学的実験により確実なものとなれば、この6つのグル-プのcDNAライブラリ-よりmRNAを合成して注入し、活性を調べることにより味覚受容体に関わるcDNAをクロ-ニングする。さらにこのcDNAをプロ-ブとして遺伝子のクロ-ニングや、PCR法にる遺伝子DNAの増幅をも合せて行う計画でいる。
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