新たに、Actinobacillas actiomycetemcomitansから50kDaあるいは70kDaの特異抗原タンパク質を、Prevotella loescheiiから130kDa特異抗原タンパク質をクローニングした。Porphyromonas endodontalisからはゲノムライブラリーをファージベクター内に構築し、特異抗原タンパク質を発現する遺伝子クローンを本菌の全菌体に対する抗血清を用いて免疫学的にスクリーニングした。そして、32kDaあるいは36kDaの抗原タンパク質を発現する2つのクローンをWestern blot法にて検出した。このリコンビナント抗原と他種口腔内感染菌由来の病原因子との交差反応は認められなかった。ついで、先にクローニングに成功したPorphyro-monas gingivalisのglycylprolyl aminopeptidase遺伝子産物の同定を行った。高度の本酵素活性を有するリコンビナントタンパク質をイオン交換クロマトグラフィーを用いて精製した。さらに、本酵素をコードするDNA断片をプラスミドベクターにサブクローニングし、本酵素遺伝子を2.9kb挿入断片上に特定した。Treponema denticolaの60kDaリコンビナントタンパク質もイオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラムおよびゲルろ過カラムクロマトグラフィーにて精製し、その精製標品の諸性質を検討した。このリコンビナント抗原は他種歯周病関連菌に対するウサギ抗血清とは反応を示さず、T.denticolaに特異性を持つことが判明した。Campylobacter rectus(旧名Wolinella recta)は歯周ポケットの環境を嫌気的に遷移することから歯周病初期感染の重要な関連菌とされているが、その感染を免疫学的に診断するために、リコンビナント85kDa特異抗原タンパク質を精製し、この抗原が本菌に特異的であることを本菌菌体に対するを抗血清を用いて証明した。以上のごとく、歯周病原菌の抗原タンパク質遺伝子を大腸菌内で発現させることにより細菌感染に対する免疫学的診断に用いるべく、抗原タンパク質を量産する方法を開発した。
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