研究概要 |
Porphyromonas gingivalisのリボゾームRNAのcDNAクローニングを行い、得られた遺伝子クローンからDNAを分離し、他の歯周病原菌染色体DNAとのハイブリダイゼーション実験を行った。P.gingivalisのリボゾームRNAクローンDNAは他の歯周病原菌の一部、特に、P.intermediaとホモロジーが認められ、特異的遺伝子領域を特定することが困難であり、煩雑であることが示唆された。そこで、P.gingivalisから歯周炎患者血清が認識する200kDa抗原蛋白質遺伝子をクローニングし、本菌に対する抗血清を用いて,リコンビナント抗原が本菌に特異的であると証明した。200kDa抗原蛋白質の主要抗原部位と大腸菌のマルトース結合蛋白質遺伝子に組み込み、融合蛋白質を産生するサブクローンを作成し、抗原蛋白質とDNAプローブの大量生産を可能にした。また、P.gingivalisの40kDa外膜蛋白質遺伝子クローンのリコンビナント抗原に対する抗血清はP.gingivalisとA.viscosusの共凝集を阻害し、凝集因子の構成成分である可能性が示唆された。加えて、P.gingivalisの病原因子の一つと考えられているglycylprolylaminopeptidase遺伝子クローニングにも成功し、遺伝子産物の同定を行った。高い本酵素活性を有するリコンビナント蛋白質をイオン交換カラムクロマトグラフィーにて精製した。さらに、本酵素をコードするDNA断片をプラスミドベクターにサブクローニングし、本酵素遺伝子を2.9kb挿入断片上に特定し、本菌感染の診断に有用なDNAプローブの作成に用いた。Prevotella loescheii,P.endodontalisTreponema denticola,Camphylobacterrectusからも各菌特異的な抗原蛋白質遺伝子クローンを得、リコンビナント抗原蛋白質を精製し、これらの歯周病原菌の感染診断に用いる抗原蛋白質の大量生産の道を拓いた。歯周病の種々な病型の発症には、それぞれ特異的細菌が関与すると考えられており、各菌種の特異抗原蛋白質遺伝子領域断片はDNA診断に用いて感染菌の検出に役立つであろう。
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