研究概要 |
フィッシャ-系ラット腹腔にホルマリン処理したバクテロイデス・ジンジバリス(Bg)を免疫した。2週間後に脾臓細胞より限界希釈法に従ってクロ-ニングを行い、8種類のT細胞クロ-ンを得た。限界希釈を用いた分析の結果、この免疫法ではTヘルパ-系(W3/13+,W3/25+,OX8ー)の誘導が強く、Bg特異的T細胞の存在は、CD4陽性細胞では5千個に1個、CD8陽性細胞では1万8千個に1個の割合でみられた。現在までに得られたT細胞クロ-ンの膜表面マ-カ-を、フロ-サイトメ-タを使って分析した結果、すべてのクロ-ンでW3/13+,W3/25+,OX8ー,OX22ーであり、また、IL2レセプタ-(OX39)、Ia抗原(OX6)の発現がみられた。いずれのクロ-ンもBgに高い反応性を示し、プレボテ-ラ・インテルメディア、アクチトバチルス・アクチノマイセテムコミタンス、ボリネラ・レクタ、フゾバクテリウム・ヌクレアトゥム、ストレプトコッカス・サンギスとは全く反応しなかった。クロ-ンのサイトカイン産上の面では、IFNーγの産生は認められたが、IL2の産生は認められなかった。一方、抗体産生系では、クロ-ンの存在下で有意に抗Bg抗体(IgG)の産生が増強されることがわかった。 このことより、得られたT細胞クロ-ンは、膜マ-カ-ではTヘルパ-系であり、OX22抗原の発現が認められないことから、メモリ-タイプの細胞であると考えられる。しかし、サイトカイン産生および抗体産生系への効果から、マウスでいわれるようなTh1、Th2といったカテゴリ-には属さないと思われる。今後は、これらの細胞クロ-ンが、歯周炎発症の病理過程で宿主の免疫応答をどの様にコントロ-ルしているのかを検索していく必要がある。
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