研究概要 |
前年度において,臨床的に健康な歯周組織を有している2名より歯肉線維芽細胞,歯根膜線維芽細胞を,及び臨床的に疾患が認められた1名より歯肉線維芽細胞を分離調整した.またPorphyromonas gingivalis381,Pre Votella intermedia ATCC 25611及び歯周疾患患者の歯周ポケット内より採取し,分離したPorphyromonas ging ivalisよりLPSを抽出,精製した.これら細胞と抽出精製したLPSを用いて本年度の研究を行った。これら分離調整した細胞を継代培養し,継代培養6あるいは7代のものを実験に用いた。実験24時間前に培養液を無血清培液に替え,実験開始時にそれぞれの細菌由来のLPSを10μg/mlの濃度になるように加えた.48時間後に培養液中に含まれるフィブリオネクチン,インタ-ロイキン,コラ-ゲンの量を測定した.LPSの代わりにILー1αあるいはILー1βを0.5あるいは5μg/m1になるように加え,LPSを加えた場合と同様な測定を行った.さらにLPSとILー1の両者を同時に培養液に加えた.すなわちLPSが10μg/mlに,ILー1αあるいはILー1βが0.5あるいは5μg/mlになるようにし,前述のものと同様な測定を行った.実験終了時の細胞内蛋白量を測定した.すべての刺激により細胞の蛋白産生能は抑制された.細胞のフィブリオネクチン産生能とコラ-ゲン産生能はLPSあるいはILー1の刺激により類似した傾向を示した.1名の正常な歯周組織を持つ者より採取された歯肉線維芽細胞は刺激により,産生能が促進された.他の1名よりの歯肉線維芽細胞では抑制された.疾患のある者より採取された歯肉線維芽細胞及び歯根膜線維芽細胞では産生能が促進された.インタ-ロイキン産生能は刺激により影響を受けなかった.またLPSあるいはILー1単独刺激よりはLPSとILー1の混合刺激の方が産生能に大きな影響を与えた.
|