研究概要 |
歯周炎における組織破壊には、組織中のコラゲナーゼを中心とするアトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)が主役を演じていることはよく知られている。近年、これらMMPの共通の内因性インヒビター(TIMP)の動態が注目され、実際の組織破壊ではこれらMMPとTIMPのバランスが重要であることが強調されている。そこで、本年度は歯周病患者および健常者における歯肉溝滲出液(GCF)中のTIMP-1量を測定し、さらに抗TIMP-1モノクロナル抗体アフィニティーカラムを用い、TIMP-1フリーサンプルを作成後、コラゲナーゼ活性を測定した。その結果、健常者のTIMP-1量は295±145ng/mlであったのに対し、軽度歯周炎患者では、17±84ng/ml,中等度歯周炎患者では80±71ng/ml,高度歯周炎患者では26±7ng/mlであり、健常者に比較して有意に低い値を示した。一方、健常者と歯周病患者にコラゲナーゼ活性について比較してみたところ、総コラゲナーゼ活性およびAPMAによる活性化処理を行なった活性型コラゲナーゼの両者とも歯周病患者において高い値を示した。これまでに報告されてきたGCF中のコラゲナーゼ活性についての研究は、TIMP-1の存在を考慮せずに行なわれてきた。本研究ではTIMP-1フリーサンプルについて検討し、GCF中のTIMP-1の動態について明らかにするとともに、TIMP-1の存在を無視してコラゲナーゼ活性を測定し得ないことが明らかとなった。さらに、本研究の結果より、歯周組織破壊に直接関与する活性型コラゲナーゼの活性の発現を確認し、又、歯周病患者のTIMP-1量は健常者よりも有意に低い値を示すことが明らかとなった。
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