研究概要 |
現在までに行った研究とそれによる知見は以下のようである。1)チタン合金の超塑性加工に関する検討:Tiー6Alー4V合金を超塑性加工して得られた義歯床の力学的挙動を調べるため,部分床義歯への応用を想定して弯曲の度合いや形態の異なる板状試験片について曲げ特性を測定した。対照としてCoーCr合金,金合金IIIで同様の15×40mmの平板試料を製作した。超塑性試料の製作は厚さ0.55mmのTiー6Alー4V合金板を950℃アルゴンガス圧8kg/Cm^2,約60分間で加圧成形した。結果は,Tiー6Alー4V合金試料はCoーCr合金試料に比べ小さなたわみでは勾配が同等で,たわみが大きくなると曲げ強さはCoーCr合金を大きく上まわった。種々な形態を付与したTiー6Alー4V合金試料では,表面に微細な凹凸をつけたり,幅方向に樋状の弯曲をつけることにより曲げ強さは大きくなった。2)超塑性加工したチタン合金義歯床の歪特性の検討:厚さ0.55mm,0.75mmのTiー6Alー4V合金を用いて上顎全部床義歯試料を製作し,口蓋部に荷重したときの各部の歪みを口蓋面8個所に貼布した3軸型歪ゲ-ジで測定した。試料は粘膜面が上になるようテフロン板上に置き,口蓋中央部に最大24kgの荷重を加えた。試料はメタルフレ-ムのみの場合に加えて,全顎用咬合堤を加熱重合レジンで作り,これを接着性即時重合レジンで合着した試料,および前歯部,大臼歯部の咬合堤を削除した試料についても歪測定を行った。その結果,咬合堤を付与することで主歪みは約2/3に減少し,特に後縁部両側で著しい減少を見せた。咬合堤の削除は主歪値にはあまり影響しなかった。さらに,0.55mm厚さの板を2枚重ねて成形したものについても検討を行った結果,主歪みは他に比べ圧倒的に小さくなり,対照としたCoーCr合金試料よりも小さかった。また拡散接合が行われていることも確認された。
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