研究概要 |
本年度は次の3項目について検討を行った。1。超塑性チタン合金(Tiー6Alー4V)義歯床の歪み特性:上顎無歯顎模型を用い、5種類の条件で超塑性成形床を製作、各々につき荷重したときの歪みを記録測定した。その結果、(1)金属床自体の歪み特性については、各床とも荷重点に近い部や正中後縁部で大きな歪みが生じた。これは厚さ0.55mmの板を床全体又は口蓋後縁部に幅10mmで、2板重ねて成形することで著しく減少した。(2)レジン咬合堤を付与した義歯床の歪み特性については、咬合提を付与すると補強されると同時に床全体が荷重を均一に負担するため、主歪み値は平均して2/3程度に減少した。(3)咬合堤の位置が歪み特性に及ぼす影響については、あまり著明な差違はみられなかった。これは、床の形態上、常に正中線上に垂直応力が集中しやすいためと考えられた。(4)粘膜模型上での歪み特性については、すべての義歯床は歪み量が大きく減少し、各床の差違も少かった。(5)口蓋部の一部が強く接触する様にした場合の歪み特性については、接触部を中心として義歯床に応力が生じ、とくに床の薄いもので顕著であった。2。超塑性成形床の適合性:板厚0.55mm,0.75mm,0.55mm2枚重ねの3種類のTiー6Aー4V合金床を成形し、さらに義歯としてレジン重合したものについて,マスタ-モデルに対する適合性を測定した。その結果、成形床のマスタ-モデルとの間隙量は平均0.13mm以下で、優れた適合性を示した。義歯床の場合には、最大で0.20mm以下で、やはり良好な適合性であった。3。超塑性チタン合金床義歯の臨床経過観察:1988〜1989年に0.55mm厚さのTiー6Alー4V合金超塑性成形による上顎全部床義歯症例29例について、リコ-ルにより経過観察を行った。その結果、2例に正中部でのレジンの破折、7例で床粘膜面の臼歯部から後縁にかけてレジンの僅かな剥離とみられる色素の侵入があり、床のたわみが関係していると考えられた。
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