研究概要 |
本年度は、三叉神経領域の刺激で誘発される循環動態の反射性変化を詳細に検討するとともに、脳幹部にリドカインを微量投与することによってこれらの反射性変化がどのような影響を受けるかについて、サイアミラ-ル・ソジウムで麻酔した成熟ラットを用いて検討した。三叉神経支配領域にある舌および歯髄(上顎切歯)の電気刺激によって、血圧は反射性に変化し,40Hzの刺激頻度では、刺激強度に比例した血圧上昇を認めた。また,開口反射の閾値を基準にして比較すると、同じ刺激強度では舌よりも歯髄刺激によって誘発される血圧上昇が有意に大きかった。脳定位固定装置に頭部を固定したラットを用いて、この刺激条件下で,三叉神経の一次中継核である三叉神経脊髄路核に,背側面から刺入した三連管ガラス微小電極を介してリドカインを局所微量投与した。その結果,同側の舌および歯髄刺激によって誘発される反射性の血圧上昇が減弱を受けた。その効果は三叉神経脊髄路核全長にわたっており、尾側部でも効果が認められた。これらの結果から,三叉神経脊髄路核尾側部が三叉一自律神経反射の反射弓の入力部を構成するか、またはその修飾を行ってるなど,重要な役割を演じていることが明かとなった。一方、同様の実験系で三叉神経脊髄路核より内側の、腹外側延髄網様体に三連管ガラス微小電極を用いてリドカインを局所微量投与した。その結果、リドカイン投与によって血圧低下が認められると同時に、同側の舌および歯髄刺激によって誘発される反射性の血圧上昇が減弱を受けた。同部は、延髄から交感神経節前線維の細胞体が存在する脊髄中間外側核に投射があるとされている。本研究の結果から、腹外側延髄網様体は、三叉一交感神経反射の反射弓で交感神経への出力部を構成していることがわかった。
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