研究概要 |
1.免疫組織化学的にGST-π活性は、ヒト口腔粘膜の過角化症、乳頭腫、上皮異型成から癌に至るにつれ強陽性を示し、GST-πが口腔の前癌病変の診断や癌の発生を病理組織学的に開析するのマーカーとなりうる可能性が示唆された。 2.薬剤耐性に関与する多剤耐性遺伝子(mdr1)の産物であるP-糖蛋白の免疫活性は、ヒト口腔癌の13.3%に認められたが、シスプラチン化学療法効果が無効の癌にはP-糖蛋白は発現していなかった。また、化学療法効果とP-糖蛋白、GST-π発現の間には相関は認められなかった。現在、さらにGST-πとmdr1の発現についてmRNAレベルで検索している。 3.ヒト口腔癌の細胞株の培養上清中におけるGST-π量は対数増殖期において最高となり、正常歯肉由来細胞のそれに比し約4〜5倍であった。GST-π免疫活性ほコントロールの正常細胞には陰性ないし弱陽性であったのに対し、癌細胞では強陽性で、GST-πは癌細胞自身が産生していることが明かとなった。 4.ヒト口腔癌におけるGST-π発現とDNA ploidy、癌抑制遺伝子P-53との間には相関は認められなかった。しかしGST-π発現と細胞増殖のマーカーであるPCNAとは相関する傾向が認められ、GST-πが細胞増殖と何らかの関係があることが示唆された。現在、さらにGST-π発現や薬剤耐性とEGFR,c-myc,c-erbB2,hst-1,int-2などの癌関連遺伝子の増幅との関係を検索している。
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