研究概要 |
ラット脛骨骨幹部に陰電極骨髄埋み法を行い,生体外で10MAを示す直流微小電流刺激を連続的に与え,同部の治瘉過程を,非通電側を対照として,組織学的ならびに組織化学的に比較した。その結果,通電1日目では両者の差はみられない。3日目では,通電側において電極周囲に毛細血管,〓原線維の増生が非通電側に比べ密に認められ,既存皮質骨,海綿骨膜面上に僅かながら新生骨梁が形成され,皮質骨内には破骨細胞が出現した。5日目では電極周囲の〓原線維はさらに肥厚し,骨芽細胞の増生が著しく,皮質骨膜面に沿って新生骨梁が形成されていた。皮質骨内の破骨細胞数が増加し,骨吸収がみられた。非通電側では骨梁形態を示すものは僅かで,電極周囲に限局していた。7日目では通電側において電極部より内骨膜面に沿って,骨髄腔全域に新生骨梁が形成され,新生骨梁周辺,ことに電極に面した骨梁に破骨細胞の出現がみられた。非通電側では5日目と同様に新生骨梁の形成は電極周囲に限局し,皮質骨側への成長は全く認められなかった。以上の所見より10μAの電流刺激は既存骨の内骨膜上のBone lining cellと骨髄中の未分化間葉系細胞に影響を及ぼし,骨形成系細胞のみならず骨吸収系細胞の機能を賦活化することが判明した。電流刺激で出現した骨細胞のAlp活性を観察すると,新生骨梁周囲に敷石状に配列し,形態的にも骨芽細胞の特徴を有した細胞群は,細胞膜に一致してAlp活性が著明に認められ,本細胞は正常の骨芽細胞と同一であることが確認された。また成熟した骨細胞ではAlp活性が消失し,Alp活性により本刺激で形成された骨細胞の分化段階が解析可能であった。電流刺激の骨細胞に及ぼす作用機序の詳細は不明であるが,骨形成系細胞ならびに骨吸収系細胞を直接的に賦活化する可能性があり,Bone Cell Unit(BMU)として,その連鎖反応的変化を解析する必要にせまられ,現在検討中である。
|