研究概要 |
小窩裂溝填塞材としての臨床応用を想定して、フッ化物配合4CPセメントを試作し、理工学的性質を、とくに口腔内での歯牙エナメル質とセメントの接着性を加味して検討し、最も有望なセメント粉末と硬化液ならびに粉液比を求めた。さらにセメント硬化体自体の経時的変化を調べた。 4CP粉末と、30%ポリアクリル酸(数平均分子量の異なる2種類を混合)15%リエン酸及び5%酒石酸からなる溶液を硬化液とした。2種類のポリアクリル酸の混合比を変化させた各種セメントにつき、硬化時間、圧縮強さ、接着強さなどを測定した。ついで、粉末にCaF_2、あるいはSrF_2を配合し、同様な理工学的性質を検討した。さらにセメント硬化体を再石灰化溶液中に浸漬し、4CPからHapへの転換程度をX線回析により調べた。その結果数平均分子量5000のものを25%、12000のものを5%混合したポリアクリル酸硬化液のセメントが練和時の操作性が良く、接着強さと圧縮強さの大きいセメントであることが判った。粉末へのフッ化物の配合は、CaF_2では30%、SrF_2では2%までの配合量では、理工学的性質が劣下しないことが判った。また、いずれのフッ化物でも配合することによりHapへの転換がすみやかに生ずることが明らかとなった。 ついで、これら、フッ化物配合4CPセメントがエナメル質への影響を調べるために、セメントからのF,Ca,Pの溶出量、および表層化脱灰巣に対するセメントの再石灰化作用を検討した。その結果、CaF_21%配合セメントが最も臨床的に有利であるものと考えられた。 そこで20人の小児に対して、半萌出状態の第一大臼歯の片側にこのセメントを填塞し、他側を無処置として経時的にう蝕発生状態を観察した。その結果、18ヶ月後においても33%のう蝕発生抑制が認められ、本試作セメントが有望な小窩裂溝填塞材であることが示唆された。
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