研究概要 |
1) 乳酸緩衝液(pH4.0)に2日間浸漬し,脱灰したエナメル質を前年度調整した27種の人工唾液に10日間浸漬し再石灰化を実施した。再石灰化エナメル質に取り込まれたフッ素濃度を指標に,3因子,3水準による統計学的解析を用いて再石灰化の程度を評価した。 2) 人工唾液中の各因子であるCarboxymethylcellulose(CMC)濃度,Ca/P濃度,F濃度のうち,CMCの主効果は10層までのliquidーbiopsy法において最表層から第4層までCMC濃度に応じて再石灰化エナメル質のフッ素濃度に有意差が認められたが,第5層から第10層まで有意差は認められなかった。Ca/P濃度の主効果が,最表層から第6層までCa/P濃度に応じて再石灰化エナメル質のフッ素濃度に有意差は認められたが,第7層から第10層まで有意差は認められなかった。F濃度の主効果は,最表層から第8層まで有意差が認められたが,第9層,第10層には有意差は認められなかった。 有意差の特徴はCMC0.5%で再石灰化エナメル質のフッ素濃度は高くなるが,1.0%と1.5%の両者には差が認められない。Ca/P濃度は,3/1.8mMで最表層の再石灰化エナメル質のフッ素濃度は高くなるが,内層では2/1.2mMが高い値となる。F濃度は3ppmが再石灰化エナメル質への常に高いフッ素濃度取り込み量を示したが,2ppmと3ppmの両者には差が認められない。 各因子間相互の交互作用は第2層,3層,4層にCMC濃度とCa濃度の相互に,また第3層のみCMCとF濃度に認められた。 3) 以上の統計学的解析,特に交互作用の結果を含めて総合評価すると,再石灰化エナメル質最表層で最も高いフッ素濃度を維持し,内層でも中程度に高いフッ素濃度を保有しうる人工唾液の要件は,CMC濃度1%,Ca/P濃度3/1.8mM,F濃度2ppmであった。また,再石灰化エナメル質最表層で中程度のフッ素濃度を維持し,内層では高いフッ素濃度を保有する人工唾液の要件は,CMC濃度0.5%,Ca/P濃度2/1.2mM,F濃度3ppmであった。 4) X線マイクロラジオグラフの所見は,上述の所見を支持するような再石灰化各部のミネラル量の回復程度を示した。
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