研究概要 |
平成4年度の研究実績は大きく3つに分けられ内容は以下の通りである。 1,脳性麻痺により摂食機能に重度の障害を呈する者の嚥下運動について,健常成人の嚥下の口腔相の動きを定性的に4期に分類した本研究結果と比較したところ,正中矢状断像において以下の特徴的な動きがみられた。 1),舌前方部の食塊移送の動きである1〜2期の動きが殆どなく,嚥下反射誘発時の3〜4期の動きを繰り返しながら嚥下する特徴的な動きがみられた。これを「逆嚥下型」として分類した。 2),舌背上の食塊を口蓋に押しつける第2期の口蓋への押しつけが不十分で,第1〜3期が健常者に比較して長い時間かかる特徴的な嚥下の動きがみられた。これを「押しつけ不全型」として分類した。 2,重度の摂食障害児(押しつけ不全型)に対して,食物の物性の違いが舌運動に及ぼす影響を正中矢状断像で検討した。その結果を上記と同様に嚥下の第1相を4期に分けて検討したところ,咽頭に食物を送る直前の第3期では,粘稠性の食物では舌根部を前下方に凹ませているのに対して,粘稠度の少ない細かく刻んだだけの食物形態では舌根部を殆ど凹ませることなく第4期へと移行していた。 3,健康な乳児について,形態の異なる3種類の人口乳首からの吸啜時の舌運動を,出生後2〜6カ月まで経月的に観察した結果,舌の基本的な動きは乳首の違いによって影響されずに蠕動様運動であったが,その動きや適合などの詳細な点では違いがみられた。しかし,4カ月頃からこの差もあまりみられなくなっていった。 上記の結果の詳細については,第9回日本障害者歯科学会および第39回日本小児保健学会において発表した。
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